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米と中・ロ首脳との会談の意味するもの

今週、バイデン・習会談が行われ、また米中央情報局(CIA)のバーンズ長官とロシアの対外情報庁(SVR)のナルイシキン長官が14日、トルコ・アンカラで会談した。この2つの会談は極めて興味深いものである。

バイデンと習は14日、インドネシア・バリ島での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、3時間超にわたり会談した。バイデン政権発足後、両首脳の対面での会談は初めてだった。アメリカ側は台湾問題での互いの「レッドライン」(越えてはならない一線)を探ることに主眼を置いたが、習氏は会談で「台湾問題こそが、最も越えられないレッドラインだ」と主張。議論は全くの平行線をたどった。

他方、 ウクライナ情勢をめぐり、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官とロシアの対外情報庁(SVR)のナルイシキン長官が14日、トルコ・アンカラで会談した。ロイター通信などが報じたところでは、2月のロシアのウクライナ侵攻以来、最も高いレベルでの米ロ高官の会談とみられる。核兵器使用の脅しを繰り返すロシアに対して、バーンズ氏が「核使用の代償とエスカレートのリスク」を伝えることが目的だったという。

つまりアメリカ外交の直面する課題が、ウクライナ戦争でのロシアの核使用阻止と中国の早期台湾進攻を阻止したい、との2つであることを示している。ウクライナでの核使用はすなわち戦争のエスカレートを意味し、台湾進攻は中国とアメリカの経済関係の破たんを意味するだけでなく、世界大戦に繋がる戦略的問題である。

ロシアはウクライナ戦線で欧米の先端兵器の軍事援助で不利に立たされており、追い詰めているので「核は使うな」といっても、プーチンは他に打つ手がなければ戦術核兵器を使うことは避けられない。戦線を膠着状態に置き、停戦に持ち込む朝鮮半島方式は、最もあり得る戦術的選択なのである。

中国の台湾進攻は、習近平が内政で行き詰ったとき取りうる軍事的解決であり、この点での主導権は中国側にある。互いにデッドラインを主張し合うことは初めから分かっていた。会談後バイデンによれば「台湾侵攻は差し迫っていない」と指摘しているので、アメリカの首脳会談の狙いは、台湾侵攻の早期可能性を探るのが目的であったと見てよいであろう。

中国における習近平の個人独裁体制確立後の経済路線が失敗した3選の終わりごろ、つまり4年以上後ぐらいに侵攻の可能性が最も高いとみられる。しかし中国側にすれば、ウクライナ戦争で欧米が手を取られているうちがチャンスであり、戦争でロシアが疲弊し、プーチン体制が崩壊した後では、中国とロシアの同盟関係が続いている保証はなく、したがって引き続き早期の侵攻の可能性は高いとみられる。したがってバイデンの「台湾侵攻は差し迫っていない」との判断は気休めでしかない。

とりわけ中間選挙で明らかになった、アメリカの内政が対立と分断を深めている中では、中国側に台湾早期侵攻の好機との判断がありうる。国際情勢の特徴は極めて流動化しており、経済危機と戦争の危機が同時に進行する情勢下においては、政治家の予想や見通しなど、何らあてにはならないと思うべきである。
# 米と中ロ首脳との会談
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コメント

No title

 アメリカは戦線を広げられると困るでしょうね。

 だから中国の台湾進攻を阻止して、各個に撃破したいのです。

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