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なぜ日本企業は設備投資を行わないのか?

帝国データバンクの調査では、2022年度に設備投資計画がある企業の割合は全体で58・9%と前年度比0・9ポイント増えた。大企業は72・0%と同2・3ポイント増加するのに対して、中小企業は56・3%と同0・7ポイントの微増にとどまり、小規模企業は43・7%で同1・2ポイント減少した。企業規模で投資意欲に差が生じている。

なぜ設備投資が低迷したままなのかについて、学者の中には、「保守的投資・財務行動」を喚起する3 つの動機、すなわち経営者の保身(エントレンチメント)、将来の投資機会に備えた予備的貯蓄、および内部資金市場の歪みを指摘する人もいる。しかしこれらは完全な間違いである。

日本企業には全体で500兆円を超える内部留保がある。しかしこの間の強欲の資本主義の政策で、日本企業は絶対的剰余価値の生産ばかりに関心が向かい、設備投資は海外か、もしくは更新投資ぐらいしか行われていない。これはバブル崩壊後の低成長路線の結果である。

日本経済はこの30年間成長路線から、経済の縮小路線に転換し、投資は労働賃金の安い海外で行い、生産拠点を移してきた。いわゆる産業の空洞化である。資本主義経済は、賃金が継続的に上昇し、個人消費が持続的に拡大し、需要(=内需)が継続的に拡大する環境でなければ企業の投資意欲は起きず、更新投資だけとなる。ところが日本の内需は縮小を繰り返してきた。この30年間日本経済は縮小再生産のサイクルにはまり込んでいるのである。

とりわけアベノミクスによる労組敵視、賃上げ抑制、円安誘導で、エネルギー、原材料資源の高騰で、日本の製造企業は大打撃を受けた。これは自動車などの海外市場中心の企業のように円安で利益が膨張するのとは対照的である。(原材料資源の高騰は対ロシア経済制裁の結果受給バランスが崩れた結果でもある。)

内需が縮小再生産であるのだから企業の関心はリストラと残業代不払いなどの野蛮な搾取に向かうことになる。これが日本でブラック企業が増えた理由である。つまり焦眉の急は国民経済を縮小から成長路線に転換できるかどうかにかかっている。

12年前に日本は世界経済2位の地位を中国に追い越されたが、現在の日本のGDPは中国の3,5分の1に過ぎない。このまま保守政権が経済の縮小路線を続けることは国賊とも言うべき愚策だ。ではなぜ成長路線に転換できないのか?その理由は以下のとおりである。
(1)自民党が宗教政党を取り込んで一強体制を固め、野党が細切れで、政権の受け皿が存在していないこと。
(2)労組が総家畜化し、賃上げのためストライキを闘えなくなったこと。賃金は労組の闘いなしに上がることはない。
(3)とりわけアベノミクスは、企業経営者の関心を非正規化や裁量労働制で、賃金などの費用価格の切り下げに関心を誘導し、結果経済の縮小のサイクルに巻き込んだこと。

一国の経済路線は、一企業家の目線で行ってはならず。一定の国民経済の成長路線を維持することを基本に運営しなければならない。とりわけ日経連を解体し、労組を家畜化し、ストなし路線を敷いたことは完全な過ちであり、日本の経済的国力を大きく削ぐ事態を生み出した。

アメリカや欧米では労組のストライキの波が起きると、国民経済が活況に移行する兆しと歓迎される。ところが日本ではストライキはご法度で、野蛮な搾取をやりまくり、国民経済まで絞め殺そうとしている。資本主義の経済を理解しない愚か者が、長期に政権を握っていることの帰結というべきだ。

資本主義は自由と民主がなければ経済が成長しない。自民党の労組敵視が野蛮な搾取をやりすぎて、国民経済の長期停滞を招いたのである。これを欧米では「日本病」といい、強欲の資本主義の政策をやりすぎた結果と見ているのである。日本経済が欧米の政治家の反面教師となっていることを日本の政治家は恥じるべきである。

岸田首相は自民党内の派閥のバランスに気を配るのではなく、アベノミクスの円安路線を転換し、「成長と分配」の公約実現に取り組むべきであろう。全野党は、デフレ経済から成長路線への転換の一点で団結し、政権の受け皿を作り、政権交代を目指すべきである。
#成長路線への転換
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コメント

経済の縮小を止めよ!

 国民経済が成長を続けるから設備投資が行われ、生産性が高まり、競争力も付く。
 ところが日本経済は縮小を繰り返しているのだから、経済が衰退し、国力が縮小しています。
 自民党に経済が分かる政治家がいないことが問題ですね。

No title

消費税で内需を縮小させたことも大きいです。
これで賃金下がり、デフレにしました。
自民党は反省すべきです。

自民はアベノミクスを変更できない

 支持基盤があるので岸田は成長路線への転換は難しいです。
  野党をまとめられる人物がいないようです。
 維新に期待したいが反労組では経済を成長せられない。
  困ったことですね。

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