ウクライナ侵攻で戦略的利益を享受する中国の矛盾
中国は、軍事侵攻がウクライナの主権と領土の一体性の侵害と国連憲章違反にあたり、中国としては支持したくない、しかしNATOの東方拡大にロシアが寄せる懸念は理解できるとしている。
中国が提唱する広域経済圏「一帯一路」戦略の沿線国を結ぶ国際列車「中欧班列」は、2020年7月に中国・武漢からキエフに向かう定期直通列車が、さらに2021年9月にはキエフから中国・西安への直通列車がそれぞれ運行開始している。中国が最も友好的とみる欧州4カ国として、セルビア、ハンガリー、ギリシアとともにウクライナを挙げている。
つまりウクライナは地政学的に「一対一路」の戦略で重要な位置にある。それでも中国の論調がロシア寄りに傾斜しているのは、ロシアとの連携関係が中国の戦略上で極めて有利に働くことを計算しているからである。習近平指導部はロシアとウクライナの戦争では「どちらにもつかず距離を保ち、中間の立場をとる」ことで、戦略的に「漁夫の利」を得られると踏んだのである。
中国指導部は、アメリカからロシアに対する経済制裁への同調を求められても同意しないことをすでに決定している。バイデン大統領は先日の一般教書演説で、中国についてわずかしか言及しなかった。しかも、中国との経済競争だけを強調し、台湾を含めた安全保障問題には一切触れなかった。これは中国の習近平指導部にはバイデンが反ロシアであっても、反中国ではないことを確信したのである。
国連総会の緊急特別会合(3月1日)で採択されたロシアのウクライナ侵攻への非難決議について、インドが中国とともに棄権に回ったことも中国には重要なことであった。インドは日米政府の共通戦略「自由で開かれたインド太平洋」の中核的な位置にある。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の一角であり、アメリカと日本はインドの取り込みを最重要視してきた。インド太平洋地域における中国包囲網は、ウクライナのNATO加盟表明で、アメリカがロシアを中国の側に追いやる戦略で「クアッド」はその一角が崩れつつある。インド軍はロシア製兵器で武装しており、反ロシアのスタンスは取れないのである。
アメリカはロシアを挑発しウクライナに侵攻させたことで、NATO存続に成功し、ユーロ圏の拡大を阻止したが、戦略的にロシアを中国の側に追いやってしまう失敗を犯した。そしてウクライナを見殺しにすることで、覇権国としての信用を喪失した。ゆえにアメリカはウクライナが存続しているうちに停戦させたいところである。
しかし、ドイツのメルケル首相が引退した今、プーチンを説得できる人物はウクライナ問題で中立の立ち位置を確保している中国以外にはない。
ウクライナのクレバ外相が3月1日、中国の王毅外相との電話会談で、ロシアの侵攻を止めるため中国に停戦仲介への期待を表明したことで、中国は戦略的に優位な位置を手に入れていることが分かった。
しかしその中国は、同時にウクライナ問題で深刻な矛盾に直面している。中国政府はロシアのNATOの東方拡大阻止への理解を示したが、そのロシアがウクライナのロシア人居住区の独立を認め、その保護を名目にした軍事侵攻は、台湾の独立問題を警戒している中国政府には絶対に認めたくないことである。
つまり中国政府はウクライナ問題で戦略的に有利な立ち位置を手に入れたが、同時に台湾独立承認の実例を認めることになりかねない事態となった。ウクライナ問題での中国政府のロシア寄りのスタンスは、「もろ刃の剣」でもあるのだ。
#ウクライナ問題での中国の抱える矛盾
中国が提唱する広域経済圏「一帯一路」戦略の沿線国を結ぶ国際列車「中欧班列」は、2020年7月に中国・武漢からキエフに向かう定期直通列車が、さらに2021年9月にはキエフから中国・西安への直通列車がそれぞれ運行開始している。中国が最も友好的とみる欧州4カ国として、セルビア、ハンガリー、ギリシアとともにウクライナを挙げている。
つまりウクライナは地政学的に「一対一路」の戦略で重要な位置にある。それでも中国の論調がロシア寄りに傾斜しているのは、ロシアとの連携関係が中国の戦略上で極めて有利に働くことを計算しているからである。習近平指導部はロシアとウクライナの戦争では「どちらにもつかず距離を保ち、中間の立場をとる」ことで、戦略的に「漁夫の利」を得られると踏んだのである。
中国指導部は、アメリカからロシアに対する経済制裁への同調を求められても同意しないことをすでに決定している。バイデン大統領は先日の一般教書演説で、中国についてわずかしか言及しなかった。しかも、中国との経済競争だけを強調し、台湾を含めた安全保障問題には一切触れなかった。これは中国の習近平指導部にはバイデンが反ロシアであっても、反中国ではないことを確信したのである。
国連総会の緊急特別会合(3月1日)で採択されたロシアのウクライナ侵攻への非難決議について、インドが中国とともに棄権に回ったことも中国には重要なことであった。インドは日米政府の共通戦略「自由で開かれたインド太平洋」の中核的な位置にある。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の一角であり、アメリカと日本はインドの取り込みを最重要視してきた。インド太平洋地域における中国包囲網は、ウクライナのNATO加盟表明で、アメリカがロシアを中国の側に追いやる戦略で「クアッド」はその一角が崩れつつある。インド軍はロシア製兵器で武装しており、反ロシアのスタンスは取れないのである。
アメリカはロシアを挑発しウクライナに侵攻させたことで、NATO存続に成功し、ユーロ圏の拡大を阻止したが、戦略的にロシアを中国の側に追いやってしまう失敗を犯した。そしてウクライナを見殺しにすることで、覇権国としての信用を喪失した。ゆえにアメリカはウクライナが存続しているうちに停戦させたいところである。
しかし、ドイツのメルケル首相が引退した今、プーチンを説得できる人物はウクライナ問題で中立の立ち位置を確保している中国以外にはない。
ウクライナのクレバ外相が3月1日、中国の王毅外相との電話会談で、ロシアの侵攻を止めるため中国に停戦仲介への期待を表明したことで、中国は戦略的に優位な位置を手に入れていることが分かった。
しかしその中国は、同時にウクライナ問題で深刻な矛盾に直面している。中国政府はロシアのNATOの東方拡大阻止への理解を示したが、そのロシアがウクライナのロシア人居住区の独立を認め、その保護を名目にした軍事侵攻は、台湾の独立問題を警戒している中国政府には絶対に認めたくないことである。
つまり中国政府はウクライナ問題で戦略的に有利な立ち位置を手に入れたが、同時に台湾独立承認の実例を認めることになりかねない事態となった。ウクライナ問題での中国政府のロシア寄りのスタンスは、「もろ刃の剣」でもあるのだ。
#ウクライナ問題での中国の抱える矛盾
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中国は棚から牡丹餅だ。
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ウクライナの大統領は早く中立宣言を出しておれば、侵略出来なかったのに、亡国を選んだ。誰からも支援してもらえないのにNATO加盟にこだわった。