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議会は対中国シフトだがバイデンは「融和政策」?

 新聞報道によると、米上院は15日、2022会計年度(21年10月~22年9月)の国防予算の枠組みを定める国防権限法案を賛成多数で可決した。総額は約7777億ドル(約88兆円)で、前年度より5%増加した。中国に対抗して米軍の態勢を強化する基金「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」には前年度の3倍超となる71億ドルが計上され、中国との競争を重視する姿勢が鮮明となった。

 米国の国防予算は、政府が提案する予算教書を元に、議会が国防権限法として毎年可決する。下院もすでに可決しており、近くバイデン米大統領が署名して成立する。
インド太平洋地域の増強に使途を絞った基金であるPDIには、バイデン政権が5月の予算教書で求めていた額よりも20億ドル多い約71億ドルが充てられた。

 国防総省はPDIを活用して、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約が19年に失効したのを受けて配備可能になった地上配備型中距離ミサイルや、極超音速兵器の開発などを進めるとしており、議会としてもこれを強く後押しする予算になっている。

 このほかにも、中国が人工知能(AI)やサイバー戦能力の強化を進めていることなどを念頭に、先端技術の研究・開発予算としてバイデン政権の要求額に大幅な上乗せを認めると強調。政権側に先端技術分野への投資を強化するよう促した。

 一方で、バイデン政権が8月に駐留米軍の撤収を完了させたアフガニスタンについては、約20年に及んだ戦争を検証する独立員会を設置するよう求めた。バイデン政権が対中国戦略を具体化できない中で、アメリカ議会がインド太平洋地域の軍備増強に政権の要求以上に予算を充てたことが注目される。

 バイデン政権は思いのほか対中国シフトに消極的で、アメリカ議会の国防権限法にみられる強硬策と対照的である。それは口先ではアジア重視・日米同盟重視といいながら、岸田首相の訪米と首脳会談を拒み続けている点にも表れている。

 バイデン大統領はウクライナ問題でもロシアの軍事強硬策に、経済制裁しか対抗策を示せなかった。またトルコのNATOへの裏切りと、ロシアおよびベラルーシへの接近を阻止できず、放置し、アフガニスタンでは政府軍を見捨てた。このため米軍特殊部隊が訓練した旧アフガニスタン政府軍の精鋭部隊がイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に合流するなど不手際が多い。

 またバイデン政権はロシアを中国側に追いやることで戦略的に不利な状況を作り、いまだ対中国戦略を具体化できない事態となっている。バイデン政権の外交が北京オリンピックの外交的ボイコット以外見るべき成果がない点は、アメリカの求心力の低下を示すものである。アメリカは中国戦狼外交に押されぱなしで、アジア諸国は中国の経済力になびいているのが現実だ。

 アメリカ国内で、優柔不断なバイデン外交を、ヒトラーの暴走を許した英国首相のチェンバレンの「融和政策」と批判する声が出ている点を指摘しなければならない。中国のファシスト的「戦狼外交」に融和的であることの危険を知るべきだ。
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