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中国5中全会の特徴について

 中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が10月26日から29日にかけて開催された。この会議で、2035年の長期目標として1人当たりのGDP(国内総生産)を 中程度の先進国の水準に引き上げることや、トップレベルのイノベーション型国家を目指すことが掲げられている。
 5中全会の報道をまとめると以下の内容になる。

(1)ポスト習近平を占う上で、後継を示唆する重要人事が発表されるとの観測が一部にあったのだが、人事の発表はなかった。今回、世代交代につながる重要人事が示されなかったことで、2022年の任期以降も習近平が主席に居座る可能性が強い。

(2)2021年~2025年の第14次5ヵ年計画の期間中の成長率目標は2021年3月に開催されるであろう全国人民代表大会(全人代)で発表される運びとなっている。
2035年までの長期目標の基本方針では、一人当たりGDPが中等先進国のレベルに達することを目標に掲げた。2019年の一人当たりGDPは1万ドルを少し超えたレベル(10,162ドル)であった。習主席は「2035年までにGDPと1人当たりの収入を2倍にすることは完全に可能だ」との見通しを示している。

(3)米中対立の長期化をにらみ、成長の軸足を外需依存から内需主導型への移行を目指す新政策「双循環」が盛り込まれている。国内経済を輸出依存から転換し、内需を拡大させ、供給側の構造改革を進めるとしている。

(4)計画の基本方針では、米中対立の長期化を想定し、ハイテク覇権の争いに向けた産業政策を盛り込み、「国家の戦略的科学技術力の強化」を掲げ、人工知能(AI)や量子情報、半導体などの分野に重点を置く方針を示しめした。また、戦略的な新興産業を発展させる分野として、情報技術や新エネルギー車、航空・宇宙などを挙げている。

* 以上の5中全会の特徴をまとめると、米中対立とコロナ禍の中で、中国は今後も先進国を目指し経済成長を維持するため、外需だけでなく内需を拡大する「双循環」政策で直面する経済危機を乗り越えようとしている。つまり5中全会は内需重視の経済政策といえる。

 問題は習近平が「双循環」政策を具体化する施策を持っているかどうかである。毛沢東時代の文革で、中国は生産手段の集団化から全人民所有を進めた。現在の中国経済は輸出経済であり、基本的に臨海部中心、外需依存の経済である。内陸部、特に農村は自給自足経済なので内需は小さい。しかも価値法則は貫徹せず、したがって内陸部では資本主義経済が早急に発展するのは難しい。

 それは地方政府が競争で作った産業都市がすべて「新鬼城」といわれる廃墟となっていることでもわかる通り、誰も投資を行う資本を所有せず(資本蓄積がなく)、都市部で国有の土地の使用権を入札で買収してビルを建て、資産を数百倍にする不動産業だけが発展した。その不動産業も恒大を見ればわかる通り、今では倒産の危機にある。つまり中国の内陸部において内需拡大の政策は非常に難しいのである。

 土地が私有制であれば、土地を売り資金を作れるが、中国の農民は作物の3年分で土地の使用権を奪われて立ち退き、すなわち地上げさせられる。国有の農地では土地売却で誰も資金を捻出できない。つまり中国の内陸部で内需を拡大するのは非常に難しいのである。ゆえに習近平の「双循環」政策は、その具体化が難しく、成功するとも思えないのである。今後の注目点は「双循環」政策の具体化がどのように行われるかである。

 日本が戦後改革で行ったように高い米価で農村の市場を拡大すれば、都市部の人民が物価高に不満を募らせるであろう。ゆえに「双循環」政策は中国の内部矛盾を拡大する可能性を含んでいるのである。
#中国5中全会
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