政府の「成長と分配の好循環」は実現できるか?
政府が作った「新しい資本主義実現会議」の緊急提言の全文(24ページ)を読んで、これでは日本経済を成長路線に転換するのは難しいと感じた。
同提言は、アベノミクスと同じ科学立国やイノベーションの抜本的強化などを訴えている。前書きに国民経済の低成長サイクルを招いたアベノミクスからの転換が書かれていないことは、国民を失望させるものである。
同提言は、初めに「従業員に賃金の形で分配してはじめて、消費が拡大し、消費拡大によって需要が拡大すれば、企業収益がさらに向上し、成長につながる。分配戦略は、成長を支える重要な基盤である。」と位置付けている。
ところが肝心の賃金を上げる以下の施策が的外れである。その内容は以下のとおりである。
(1)賃上げの機運醸成
(2)男女間の賃金格差の解消
(3)賃上げを行う企業への税制支援
(4)労働移動の円滑化人的資本への投資の強化非正規雇用労働者等への分配強化
これでは賃金を上げることはできない。アベノミクスが賃上げを行えなかったのは、経団連に働きかけただけであったからである。企業は賃上げをおこなえば、目先の利益が減るのだから、日本がこの30年間賃金が上がらず、下がり続け、国民経済の縮小を招いたのである。
この日本の賃金が上がらないようにしたのは、「戦線統一」を口実にした労組の家畜化と、闘うユニオンつぶしに原因がある。資本主義経済の成長は闘う労組なしに賃上げを誘導することはできないのである。
ところが財界(=経団連)は賃上げを誘導してきた日経連を解体し、総評を解体して、日本の既成労組をすべて家畜化した。彼らはソ連崩壊で革命の心配がなくなったと「改革」と称した「強欲の資本主義」の施策に転じたことが、現在の日本経済の衰退・縮小を招いたのである。
戦後の戦乱の荒廃から、日本経済が急成長できたのは、GHQの戦後労働改革が大きな要素を構成している。労組の合法化と労働3権を認めたことで、戦後高揚するストライキで継続的に賃金が上がり、需要(=消費)が拡大して、戦後の経済復興が成功したのである。
つまりアメリカやドイツのように労働運動の高揚でストライキが起こり、自然に賃金が上がっていく、それが資本主義の経済法則であり、何も政府が賃上げを行う企業への税制支援を行わなくても、労働運動を抑え込まなくすれば、自然に賃金は上がっていくのである。問題は政府の労組敵視の経済施策(階級弾圧)の誤りにある。賃金の上昇は労働者の働く意欲を増やすだけでなく、消費を拡大し、設備投資を促し、経済的需要を拡大し国民経済の成長を促すのである。
強欲が過ぎて労組を家畜化し、そのことが日本資本主義の経済成長を阻止し、30年間の経済的停滞、国民経済の縮小を招いたことは、自公路線の最大の誤りであったし、国民から見ればまさに国賊的施策であった。
資本主義社会では、この誤りを哲学的に表現すれば、賃金が上がれば目先の利益が減少するという、一側面だけを見て、労働者と経営者が「対立しながらも互いに相手を必要とする」対立面の統一の法則の関係にあることを理解しなかったゆえであることを指摘しなければならない。
つまり政府の「分配戦略」は肝心の労組活動の容認という家畜化政策の放棄が含まれていないので、成功しないということは明らかである。もちろん政府が最低賃金を現在の韓国以下の低いレベルを、欧州並みの1時間1500円にすれば、競争力の無い企業は淘汰され、生産性を上げるための設備投資が起こり、一定程度経済は成長する。しかし岸田政権の企業に減税して賃上げが起きると考えるのは無理がある。
「新しい資本主義実現会議」の緊急提言は、資本主義経済を理解しない者の作文としか言いようがない。
2021年11月9日 新世紀ユニオン委員長 角野 守(かどの まもる)
同提言は、アベノミクスと同じ科学立国やイノベーションの抜本的強化などを訴えている。前書きに国民経済の低成長サイクルを招いたアベノミクスからの転換が書かれていないことは、国民を失望させるものである。
同提言は、初めに「従業員に賃金の形で分配してはじめて、消費が拡大し、消費拡大によって需要が拡大すれば、企業収益がさらに向上し、成長につながる。分配戦略は、成長を支える重要な基盤である。」と位置付けている。
ところが肝心の賃金を上げる以下の施策が的外れである。その内容は以下のとおりである。
(1)賃上げの機運醸成
(2)男女間の賃金格差の解消
(3)賃上げを行う企業への税制支援
(4)労働移動の円滑化人的資本への投資の強化非正規雇用労働者等への分配強化
これでは賃金を上げることはできない。アベノミクスが賃上げを行えなかったのは、経団連に働きかけただけであったからである。企業は賃上げをおこなえば、目先の利益が減るのだから、日本がこの30年間賃金が上がらず、下がり続け、国民経済の縮小を招いたのである。
この日本の賃金が上がらないようにしたのは、「戦線統一」を口実にした労組の家畜化と、闘うユニオンつぶしに原因がある。資本主義経済の成長は闘う労組なしに賃上げを誘導することはできないのである。
ところが財界(=経団連)は賃上げを誘導してきた日経連を解体し、総評を解体して、日本の既成労組をすべて家畜化した。彼らはソ連崩壊で革命の心配がなくなったと「改革」と称した「強欲の資本主義」の施策に転じたことが、現在の日本経済の衰退・縮小を招いたのである。
戦後の戦乱の荒廃から、日本経済が急成長できたのは、GHQの戦後労働改革が大きな要素を構成している。労組の合法化と労働3権を認めたことで、戦後高揚するストライキで継続的に賃金が上がり、需要(=消費)が拡大して、戦後の経済復興が成功したのである。
つまりアメリカやドイツのように労働運動の高揚でストライキが起こり、自然に賃金が上がっていく、それが資本主義の経済法則であり、何も政府が賃上げを行う企業への税制支援を行わなくても、労働運動を抑え込まなくすれば、自然に賃金は上がっていくのである。問題は政府の労組敵視の経済施策(階級弾圧)の誤りにある。賃金の上昇は労働者の働く意欲を増やすだけでなく、消費を拡大し、設備投資を促し、経済的需要を拡大し国民経済の成長を促すのである。
強欲が過ぎて労組を家畜化し、そのことが日本資本主義の経済成長を阻止し、30年間の経済的停滞、国民経済の縮小を招いたことは、自公路線の最大の誤りであったし、国民から見ればまさに国賊的施策であった。
資本主義社会では、この誤りを哲学的に表現すれば、賃金が上がれば目先の利益が減少するという、一側面だけを見て、労働者と経営者が「対立しながらも互いに相手を必要とする」対立面の統一の法則の関係にあることを理解しなかったゆえであることを指摘しなければならない。
つまり政府の「分配戦略」は肝心の労組活動の容認という家畜化政策の放棄が含まれていないので、成功しないということは明らかである。もちろん政府が最低賃金を現在の韓国以下の低いレベルを、欧州並みの1時間1500円にすれば、競争力の無い企業は淘汰され、生産性を上げるための設備投資が起こり、一定程度経済は成長する。しかし岸田政権の企業に減税して賃上げが起きると考えるのは無理がある。
「新しい資本主義実現会議」の緊急提言は、資本主義経済を理解しない者の作文としか言いようがない。
2021年11月9日 新世紀ユニオン委員長 角野 守(かどの まもる)
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コメント
組合敵視は変わらない
岸田政権の新しい資本主義は、アベノミクスの延長に過ぎないと思います。
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