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上海協力機構の肥大化に無策のアメリカ

アメリカが国内に対外干渉に反対する孤立主義の「アメリカ第一主義」が台頭し、バイデン政権は支持基盤の全米自動車労組などがTTP加入に反対した。TTPは中国やロシアを包囲する経済戦略であったのだが、その提唱者のアメリカが加入できない事態が続いている。

これに代わり、アメリカが追及しているのは第2次世界大戦の遺物であるNATOの拡大である。これはユーロ経済圏の拡大を阻止するアメリカの陰謀なので、早晩欧州諸国はアメリカ追随外交から脱する道を選択するであろう。

アメリカが世界戦略としての経済戦略を持ちえない中で、中国が進める上海協力機構(SCO)は着実に拡大している。サウジアラビアが、上海協力機構(SCO)に参加する決定を閣議で了承したことは重要な変化である。アメリカは安全保障上の懸念を示しているが、サウジは中国との長期的な関係を築く道を選択したのである。

上海協力機構は中国、ロシア、中央アジア諸国が2001年に結成した政治・安全保障の地域協力組織である。インドとパキスタンも加盟しており、欧米に対抗する組織としての役割拡大を視野に入れている。イランも昨年、加盟文書に調印した。これに産油大国のサウジが参加した戦略上の意味は大きい。OPECプラスが原油価格の高値を維持するために減産を進めていることは、欧米が直面する金融危機を深刻化する可能性がある。

フランスのマクロンがユーロを多極化の一角を目指すと表明しているように。ユーロ圏、上海協力機構圏、ブラジルなど新興工業国圏がそれぞれドル建てでの貿易を回避し始めたことは、アメリカのドルが暴落する可能性が出てきたということであり、こうした世界経済のブロック化の動きに、アメリカがなすすべがない事態が生まれているのである。

こうした事態を打破するためにアメリカはウクライナへの軍事支援を強化しているのであるが、逆にアメリカが経済的に疲弊し、物価の高騰で金利を上げざるを得ず。それに伴う金融危機に直面している。アメリカの保守派の中にウクライナ支援を削減せよとの声が生まれているのは、アメリカの覇権維持が難しくなっていることの反映なのである。

これらの世界の多極化は、誰かの政治的意図で生まれているのではない。資本主義の不均等発展の法則が、世界経済の多極化を促しているのである。つまり経済のブロック化は世界経済の発展の帰結であり、アメリカに多極主義者がいるわけではないのである。

第2次世界大戦後の世界通貨のドルの地位が、多極化で揺らぎ始めたことは、世界経済の段階を画した変化であり、とりわけアメリカの先端技術面での中国への隔離政策は、この経済の分断=ブロック化に拍車をかける可能性が強い。世界経済のブロック化が、貿易の縮小、世界的不況へと進む危険を指摘しなければならない。

アメリカが国内の孤立主義と、覇権維持派の分断と対立を克服できなければ、世界は混とんとした経済的対立と、政治・軍事的対立へと進む危険がある。アメリカがグローバル経済を維持する経済戦略を出せない点に、世界の直面する不確実性がある。世界経済をリードするのが、上海協力機構という独裁連合であることが、世界情勢の先行きを不確実で、暗いものにしているのである。
#上海協力機構

世界貿易でドル支配からの脱却が進み始めた

アメリカがウクライナの極右にテコ入れしてクーデターを画策し、親ロシア派政権を打倒して、ウクライナに住むロシア人を迫害し、NATO加入を発表してロシアを挑発し、軍事侵攻させた狙いが、ユーロ経済圏の東への拡大を阻止する狙いがあったことが、欧州のフランスやドイツにもわかり始めたようだ。

フランスのマクロン大統領は訪中して、ロシアと戦略関係を強め対ロシア貿易を2倍にした中国を批判せず、逆に、中国と戦略パートナー関係を締結して協力し合う方向を打ち出した。 マクロンは「欧州を米中と並ぶ世界の極の一つにしたい。」「欧州はアメリカから自立せねばならない」とし、台湾問題は欧州が関与すべき問題でないと「第3極」に立つとし、「ドルへの依存を下げるべきだ」などの発言を行っている。 マクロンの訪中に合わせ、中国から初めて人民元建てで液化天然ガスを買ったりもしている。

中国は、中東からの原油購入を自国通貨元で行い始めている。ブラジルのルラ大統領が中国を訪問し、中国とブラジルの「全面的戦略パートナーシップ」の深化に関する共同声明を出した。ルラ大統領は中国企業にブラジルでの投資や事業の拡大を直接要請した。またウクライナ戦争に関し「アメリカが戦争をあおっている」と発言した。ウクライナ和平で中国と一致しだけでなく、「なぜドルを使わねばならないのか?」と発言し、新興国内部の貿易からドルを排除する提案をして、中国を喜ばせている。インドも中国に影響され、自国と中国やロシアとの貿易決済をドルでなくルピーでやる新戦略を打ち出している。

アジアのアセアン諸国は、「米中対立の影響を受けないようにする」との口実で、域内の貿易決済で、ドルや円やユーロを使うのをやめて代わりに加盟諸国の地元通貨を使うことに関する議論を開始した。これら一連の動きが示しているのは世界貿易の先行きは、ドル支配から多極通貨へと、通貨のブロック化が進む方向が明白になっている。

通貨のブロック化の動きが世界的に拍車をかけ始めたのは、アメリカ国内に対外干渉に反対する「アメリカ第一主義」(=トランプ派)が台頭し、アメリカ国内が覇権維持派(産軍共同体と金融資本)とアメリカ第一主義派の分裂と対立が深刻化していることの反映でもある。

中東産油国プラスが原油の減産を打ち出したことでもわかるように、中東は丸ごとロシア・中国ブロックに加担しはじめ、原油価格の高値維持により、欧米の高物価が続くことはアメリカの高金利が続き、金融危機が深刻化することでもある。アメリカのバイデン政権がウクライナへの武器支援を強化しているのは、こうした国際情勢におけるドル支配への逆風の強まりを、軍事的に阻止しようとするものである。

しかしそのことが戦争の泥沼化で、アメリカのドル支配をさらに弱めることに繋がりつつあることを指摘しなければならない。トランプの「アメリカを再び偉大にする」との発言が、アメリカ人民の支持を集める環境が出来つつあることに注目しなければならない。トランプの支持率が上がっているのは根拠があるのだ。
#世界貿易の多極化

米民主党議員がFRBの利上げを批判する背景

米連邦公開市場委員会(FOMC)が22日に政策金利の0.25ポイント引き上げを決めたことに、民主党のウォーレン議員はFOMCが利上げを決め、追加引き締めの可能性を示唆したのを受け、「FOMCとパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が極端な利上げを一時停止しなかったのは過ちだ」とツイート。

シューマー院内総務は今回の利上げについて「経済への影響を私は懸念している」と述べた。下院予算委員会所属のボイル議員は、「金利をあまりに高く、過度の急ピッチで、特にこの状況で引き上げることは、バイデン大統領の下でアメリカ人が享受してきた記録的な回復を台無しにしかねない」と警告した。

民主党の議員たちは、2024年の大統領選挙を前に相次ぐ利上げでリセッション(景気後退)に陥りかねないとして、今回の利上げに懸念を表明しているのである。しかしFOMCとFRBが銀行の破産が相次ぐ中でも利上げを止めやれなかったことは、アメリカの直面する「新型金融危機」の深刻さを示しているのである。

景気が悪くなろうが、アメリカは利上げをして物価の上昇を止めなければ住宅ローン延滞率が上昇を続け、住宅ローン担保証券が暴落し、シャドーバンク(影の銀行)といわれる証券会社、保険会社、投資ファンドなどが破たんし、住宅ローン担保証券を購入している銀行も破たんしかねない。

FOMCとFRBは景気後退以上に深刻な金融危機を考慮して利上げを続けることを決定したのである。ところが大統領選を2年後に控える民主党の有力議員にとって、景気後退を招く利上げは政治的に受け入れられないのである。

一般的に、アメリカが利上げすれば円安になる。ところが今回の利上げは円高になった。これはアメリカの相次ぐ銀行破たんであるのに、アメリカが利上げをやめられないほどに直面する米金融危機が深刻であることを市場が認識したゆえである。

こうした国際経済の直面する深刻さが、日本の政治にどのように反映するだろうか?今年後半にもアメリカが景気後退の可能性が強くなったので、岸田政権はそれまでに衆院を解散した方が、長期政権の道が開ける、と考えるであろう。岸田首相が日韓関係を改善し、ウクライナ訪問、G7サミット成功直後に衆院を解散する可能性が強くなったと見た方がいい。

アメリカが景気後退になれば、日本や欧州も景気後退は避けられない、岸田首相が解散するならそれまでが好機となる。アメリカの金融危機が今後どのような展開を見せるかが世界の焦点となるであろう。もし国際的な景気後退となれば、日本の企業は又も大リストラに直面する。各労組はリストラへの備えをしておくべきであろう。
#米金融危機 

利上げを控えられないFRBの決断の背景

米銀の相次ぐ破綻や銀行の破綻の欧州への広がりの中で、FRBは利上げを控えると見られていたが、FRBは、21日から2日間、開いた会合でインフレ抑制を優先し0.25%の利上げを決めた。FRBは、利上げを控えられない事情があるということだ。

FRBは、金融不安がくすぶる中でも物価と労働市場に関する指標が予想以上に強かったことを理由にあげている。FRBのパウエル議長は記者会見で、「会合の参加者は、インフレ率が徐々に低下することを予測しているが、それでも年内の利下げは想定していない」と述べた。

FRBのパウエル議長は、相次ぎ利上げ政策で銀行破綻が相次いだことをふまえ、銀行への監督や規制を強化する必要があるという考えを強調した。0.25%の利上げを受けて、22日の米株市場は大幅反落した。ダウ工業株30種平均は前日比530ドル(1.6%)安の3万2030ドルで引けた。

今後の焦点は今回の利上げが住宅ローン貸し出しの大手が業績見通しが悪化しており、シャドーバンク(影の銀行)といわれる証券会社や保険会社、住宅ローンの貸し手の銀行が破たんに追い込まれるかどうかである。

影の銀行が作り上げた住宅ローン担保証券(МES)は世界中に売られており、日本の地方銀行も購入している。アメリカの雇用条件が悪化すると住宅ローン延滞率が上がることになる。実際にアメリカではインフレで住宅ローン延滞率が上がっている。FRBが銀行の相次ぐ破たんにもかかわらず利上げ政策を継続したのは、物価上昇を抑制しないと住宅ローン担保証券(МES)が暴落し、金融危機が世界的に深刻化するからなのである。

つまりアメリカは、相次ぐ利上げ政策で債券投資を行っているIT企業が地盤のシリコンバレー銀行(SVB)がつぶれたのに、それでも利上げを続けるのは、より大きな金融危機を回避するためなのである。住宅ローン担保証券(МES)が暴落すれば世界中に金融危機が拡大する恐れがある。つまり今回の金融危機は終わってはおらず、さらに拡大する恐れがあるということだ。

ウクライナ戦争を早く停戦しないと欧米のインフレが続く、インフレを抑えるための利上げが続けば、金融危機が深刻化する。それでも利上げしないと、もっと大きな金融危機が起きるのである。ウクライナ戦争の継続で、追い詰められているのはロシアではなく、欧米金融資本の方なのである。

日銀がゼロ金利をやめられなくなっているのは、アメリカの金融危機が深刻化しているので、日本の銀行救済と見た方がいい。日本のゼロ金利政策継続とは、国民の預貯金への利子支払い部分(年間数兆円)を銀行に免除することであるからだ。言い換えるとゼロ金利政策とは国民収奪の事である。
#米金融危機 #FRBの利上げ

世界経済・今年後半の景気後退がありうるか?

アメリカでは高物価がつづいており、相次ぐ金利上昇で、IT企業を中心に人員削減が続いており、今年後半にも景気後退の声も出始めて、アメリカでは「新型金融危機が破裂まじか」との報道もあるので、アメリカ経済の情報をチェックしてみた。(以下は米報道からの抜粋である)

*米チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが9日発表した調査によると、米企業や政府機関による1〜2月の人員削減は計18万713人と09年の同期間(42万8099人)に次ぐ高水準となった。2月の人員削減計画は7万7770人と前月から24%減ったが、前年同月比では5倍強に増えた。昨年後半から人員削減に乗り出す企業が相次いでおり、2月時点で発表された人員削減計画の35%はIT(情報技術)企業によるものだった。

*昨年来、FRBがインフレ抑制のためにトータル4.5%の積極的な利上げを行った結果、金利は2007年以来の高水準に達し、株式や債券に重くのしかかった。専門家は、金利の上昇は経済への過度な締め付けとなり、景気後退につながる可能性があると警告している。

*ロイター通信によれば、米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は7日、米経済は2023年第3・四半期にテクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)に突入するとの見通しを示した。
・スタートアップやベンチャーキャピタル(VC)との取引で知られる銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの株価が9日急落し、前日比60%安で終えた。8日に資本増強のために普通株の発行などで22億5000万ドル(約3060億円)を調達すると発表。新興テック企業など取引先の資金繰り悪化に伴う預金流出の懸念が広がった。

*9日の米株式市場でJPモルガン・チェースなど大手銀行株が急落した。預金流出に見舞われた米銀行持ち株会社SVBフィナンシャル・グループが保有する債券を売却し、巨額の損失を計上したのがきっかけだ。2022年以降の米金利上昇(債券価格の下落)で保有債券の含み損を抱える大手銀でも将来的に売却損が生じかねないとの懸念が高まり、銀行株売りを誘った。

*米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は9日、早期退職者の募集を始めると明らかにした。米国で働く事務系などホワイトカラーの従業員と、全世界の幹部職を対象とした新規プログラムを始め、6月末までの退職を促す。2024年末までに20億ドル(約2700億円)のコストを削減する計画で、人員を絞り固定費を抑える。早期退職プログラムは、勤続5年以上の米国のホワイトカラー系従業員と、勤続2年以上の全世界の幹部職が対象になる。早期退職者の募集は3月下旬に締め切る。

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アメリカ経済は、ウクライナ戦争で穀物・エネルギー・兵器の輸出でぼろ儲けしており、現状のアメリカ経済は一人勝ち状態である。しかし他方で、IT企業関連の広告収入が激減しており、リストラが大規模に行われており、今年後半の景気後退が起きる可能性がある。世界的に見て欧州経済がロシアからの安いエネルギーが入らなくなり、落ち込みがひどいこと、中国経済も落ち込みがひどく、ゼロコロナの影響と、貿易額が激減していることなどから、今年後半の景気後退が心配されている。

ウクライナ戦争が停戦の見通しがなく、むしろ戦争の拡大の可能性もあり、世界市場の分割など、不確定要素が多い中での、今年後半の景気後退が心配されている。

外需頼みの日本経済は、賃上げによる内需拡大が実現しないと、今年後半の景気後退が心配される。春闘での賃上げが物価上昇率を上回るか、最低賃金の大幅なアップが必要な局面である。ゆえに3月15日の春闘の集中回答が世間の注目を集めているのである。
賃上げが物価上昇分を下回るようだと、岸田政権のゼロ金利継続のインフレ政策と、バラマキ=増税路線で景気が悪化する心配がある。
#世界経済の後退
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