トランプ政権の対欧州戦略に注目せよ!

トランプ大統領はNATOを時代遅れと批判し、欧州の移民政策を批判、とりわけドイツの移民政策を失敗とまで批判してきた。またトランプは、EUを離脱したイギリスを評価し、またEUをドイツのためのものと見なしており、最近では国家通商会議のナバロ委員長が不当なユーロ安で暴利をむさぼっているとドイツを批判した。つまりトランプ米政権はドイツのメルケル首相を窮地に陥れ、ユーロの崩壊を狙っていると見られ、欧州諸国はトランプ政権を強く警戒している。

そのトランプ政権の閣僚3人が今週欧州を訪問する。マティス国防相が15日のNATO国防相理事会で、各国に「アメリカの納税者はもはや不釣り合いな負担を担えない」として各国に国防支出の増大を強く求めた。マティス国防相は、アメリカがNATOへの関与を縮小する可能性も言及した。

今月16,17日にはティラ―ソン国務長官がドイツのボンでの主要20カ国外相会談に出席する。また17日~19日にはミュンヘン安全保障会議にペンス米副大統領、マティス国防相が出席する。この場でのアメリカ側の発言で、アメリカの対欧州戦略が浮かび上がるであろう。

アメリカは、同盟国日本には駐留米軍への負担増は言及しなかった。しかし欧州にはマティス国防相が国防支出の増大を強く求めたことから、ドイツに対しどのような対応を取るのか注目される。日本と同じくドイツは第2次大戦の敗戦国だが、東西対立の中で西と東に分断された分ドイツは日本ほど対米従属ではない。どちらかと言うとドイツは自立している。だからトランプ政権が発足してドイツ国内では独自核武装論が国内で出ている。

アメリカにとって覇権国としてのドル支配に、地域統一通貨ユーロで独自の経済圏を目指すEUはいわば競争相手であり、したがってトランプ政権は欧州に厳しい対応を取る可能性がある。とりわけドイツはアメリカとの貿易黒字が多く、EUの親分格であるだけに一連の国際会議でのアメリカ側の発言がどのようなものになるのか世界が注目しているのである。安倍首相がトランプにドイツのメルケルに何らかの働きかけを託されている可能性もある。トランプ政権の関心がドイツのメルケル首相にあるのは間違いない事である。

とりわけ当面のアメリカの戦略的敵である中国の、アジアインフラ投資銀行に欧州諸国が投資し、中国と共に大ユーラシア経済圏を目指していると見ているトランプ政権は、欧州に経済・防衛でどのような揺さぶりと強い態度を取るのかが注目される点である。
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国民投票の結果を反故にして民主主義国と言えるのか?

イギリスのEU離脱を決めた国民投票後、イタリアが今秋にも国民投票となる。「単一通貨ユーロからの脱退」を求める「5つつ星運動」が世論調査で首位に躍り出たのである。

イタリアの選挙制度では第一党になれば議席の過半数を獲得できる。「5つつ星運動」創設者はコメデアン、議員団の指導者は弁護士だ。国民の既成政党への不信感が「5つつ星運動」への支持を拡大している。秋には憲法改正の国民投票がある。イタリアは、いまや国民の半数がEU離脱だという。EU内の離脱傾向は強まるばかりだ。

そのような中で、EU離脱を国民投票で決めたイギリスで、EU離脱を反故にする動きが出てきた。保守党政権がメイ新首相が離脱申請やその後の交渉を先送りして、事実上凍結にしてしまおうとしている。メイ新首相は「今年中に離脱申請は行いません」といい、ドイツのメルケル首相も「離脱申請がなければ交渉もない」と発言した。

離脱派は元々保守党の3分の1程度しかいないので、国民投票の結果を反故にすることも可能なのだという。月刊誌「選択」8月号によればシティに勤務する法務関係者は「EU法から英国法に切り替える作業だけで数千の法律改正が必要になる。そんな作業をこなす人材が何処にいるのか」という。
イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は「時間をかければ今は政治的に不可能なことも、やがて可能になる」という。

こうして国民の投票で決めたことが、政権与党の保守党によって手続きを遅らせ、「凍結し」、先送りで、反故にされようとしている。いかに経済的混乱を避けるためとはいえ、民主主義的な国民投票結果を事実上覆して、果たしてイギリスは民主主義の国と言えるのだろうか?民主主義発祥の国で民主主義が死に直面している。

イギリスの国民投票が世界の経済を揺さぶる!

23日のEU残留か離脱かの国民投票が世界の株式市場を揺さぶるかもしれない。下院議員の射殺事件で世論調査は拮抗している。投票の結果後の日本市場に世界の注目が集まることになる。

日本企業の340社以上がイギリスを欧州市場の拠点にしているため、離脱となると日本経済も打撃を受けることになる。とりわけEUの経済的打撃は大きいものとなる。

世界の主要国の大衆は格差の拡大に大きな不満を持ち始めており、それがイギリスでは移民問題となり表面化した。これはアメリカのトランプ現象と同じで、格差社会への不満が移民への反発として現象しているのである。

アメリカの大統領選で大衆の格差社会への不満が爆発すると「移民反対」のトランプが勝利する可能性がある。当初欧米ではデフレ経済は日本だけに特有なものとしてきた、しかし実際には欧米もデフレ傾向が出てきており、このデフレの原因が冷戦後の強欲の資本主義の結果、格差社会が進み、消費不況として、デフレが先進国全体の問題となってきた。

このデフレからの脱却には、冷戦時の労働分配率に戻す必要があるのだが、その社会的合意が難しい。一度強欲の資本主義になれると、拡大再生産の基盤となる高い分配率に戻すことなどできないのである。普通は強い労組を生みだす法制で解決するのだが、移民という安上がりな労働力を入れることで賃下げを誘導した結果、問題が移民問題となったのである。

冷戦時には社会主義体制との競争が搾取を自制することになり、経済成長に適度な労働分配率になっていたのが、冷戦の終了で強欲の資本主義に転化したことがデフレ経済を招くことになった。こうして経済的問題が格差社会を招き、民族排外主義の移民問題に転化し、国民投票での決着となった。

移民問題の根源は格差社会の問題であり、それがEU離脱問題になり、世界経済をゆさぶる事になった。投票結果を世界中が注視している。

イギリスのEU離脱問題が示すもの!

EUの経済統合が政治統合へ進む中で、イギリスの文化もEUのなかで希薄になるのは当然で、しかも難民を受け入れることはEUの発展を考えると、安上がり労働力の流入が必要なのだが、それは労働者には賃金が上がらず、仕事を奪われることでもある。しかも「ゆりかごから墓場まで」と形容されるイギリスの福祉を多数の難民にも補償するには増税は避けられない。

しかも難民の増加は経済面でプラスであっても治安面では悪化するので、イギリス国民が国民投票でEU離脱を選択しょうとすることも理解できる。しかし離脱すると、イギリスをEU市場への輸出基地として進出している多くの日本企業が打撃を受け、工場をフランスやドイツに移すことになり、イギリスで雇用が大量に失われる事になる。

最も重要なことは、EUからイギリスが離脱すると、より一層難民を抱える事になるEU内の矛盾が激化し、欧州の経済危機が激化する可能性が強いことである。もしEU離脱が現実のものとなれば、EUは各国の文化まで統合するのか?各国の特殊性を認める柔軟性を選択できるのか?という問題が持ち上がるであろう。特に難民を欧州が受け入れ続ける政策に無理がある。

中東を宗派争いで武器市場に変え、戦場に変えた今、今後も際限の無い難民が流出する可能性がある。中東には莫大な石油収入を上げる豊かな国がいくつもある。サウジやアラブ首長国連邦やクエ―ト等はなぜ難民を受け入れないのか?中東の難民は中東に難民キャンプを作り、経済支援で維持する方がいいに決まっている。

難民を欧米が受け入れれば、それと共にテロを拡散することになる。重要なのは中東を武器市場に変えたアメリカの政策を変更することである。これ以上の難民を出さないようにし、難民問題でEU統合が分裂したり、経済危機を招くことを避けなければならない。現状のままでは欧州諸国は極右が台頭し、犯罪が増え続け、経済危機の上に社会的危機を招くことになりかねない。

つまり世界中がイギリスのEU離脱に注目するのは、その反響があまりにも大きいからである。離脱が決まれば世界中で株価が暴落し、一大経済危機が生まれるであろう。

難民問題が欧州を揺さぶる!

ドイツのメルケル首相は難民を受け入れることで安上がりの労働力が手にいると安易に考えたのが間違いであった。EU加盟国には難民受け入れを拒否できないという法律があります。ですからシリア難民が100数十万人も欧州を目指すことになりました。

ところが難民と同時にアフリカや中東から犯罪者まで流れ込む事になり、欧州の治安が一気に悪化することになりました。また安上がり労働力の流入は欧州の労働者の職を奪うことにもなり、難民への反対が広がりました。

フランスやドイツや欧州諸国で右翼勢力が台頭しているのは難民問題の産物であるのです。またイギリスではEU脱退の国民投票が近く行われる事になりました。イギリスは社会保障が手厚いので難民にとっては人気の国です。福祉手当が支給され、無料で医療施設が利用でき、住居も与えられます。こうしてイギリスを目指す難民が増えれば増えるほど、イギリス国民への税負担がのしかかり、こんなことならEU加盟国から抜けた方がいい、との主張が出てきたのです。

ロンドンは金融の拠点であり、イギリスには日本企業が931社も進出しているのは、イギリスを欧州市場の生産拠点にしているからです。ところがこうしたEU加盟のメリットを放棄してでもイギリスはEU脱退をした方がいいとの声が増えてきたのです。

イギリスの国民投票は6月23日に行われます。現在のところEU離脱が47%で、EU残留が44%で離脱派が多数を占めており、その投票が世界の注目を集めています。もし離脱派が勝てばイギリスは欧州の金融の中心としての地位を失い、EU全体が不況になることが心配されています。

日本のイギリスへの直接投資は一兆7000億円で、アメリカに次ぐ世界2位の金額であり、日本企業もイギリスがEU離脱となれば、大きな打撃を受ける事になります。難民問題はまだまだ欧州を揺さぶり続ける事になるのです。
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