フィリピンのバランス外交は成功するのか?
フィリピンのマルコス大統領が1月に中国の習近平国家主席、続いてアメリカのオースティン国防長官と相次いで会談し、2月8日からは訪日しています。彼の外交を見ていると大国間の狭間で、小国が生き抜くためのバランス外交が見て取れる。そこには同じような米中の間にあって、岸田首相のようにアメリカ外交に全面追随するスタンスとの違いが見て取れる。
1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)で、マルコス大統領は「我々は東南アジア諸国連合(ASEAN)として、(米中の)対立から距離を置くと決意している。アジア太平洋、インド太平洋の未来は我々にしか決められない」と述べた。そこには大国間の覇権争奪に巻き込まれると、ウクライナのように「使い捨ての駒」ように扱われてはいけない、との小国の生きぬく知恵が表れている。
フィリピンと東南アジアを戦略的競争の渦中に置こうとする圧力が双方からある中で、マルコス大統領は、在フィリピンの米軍の基地を数か所に増やすことを受け入れた。彼は、アメリカの「スイングステート(揺れ動く州)」のように陣取りの対象にさせないよう距離を置く、といいながら、米軍基地設置を受け入れたのは理由がある。
フィリピンの周辺には南シナ海、台湾という二つの地政学的な対立の火種がある。マルコス大統領はこれらの地域紛争に巻き込まれることを望んでいないが、強大な軍事力を背景に「群狼外交」を進める中国の力の前に、南シナ海のフィリピンの諸島が現実に中国に奪われている。つまり中国・フィリピン間の軍事力の差をフィリピン政府は痛感し、国内に米軍基地を増設することで中国軍の脅威に対抗するほかないということである。
マルコス大統領は1月の訪中で、中国から再生可能エネルギーなど計228億ドル(約3兆円)の投資の約束を取り付けたが、この約束も履行される保証はない。中国に融和的な政策を取ったドゥテルテ前政権時代にも中国は多額の投資を約束したが、実現したのはほんの一部であった。それは「約束の罠」であったが、実際には履行されなかった。軍事的にたやすく占領できる国に、多額の金を投じるほど覇権主義の中国は甘くないのである。
これがバランス外交を政治信条とするマルコス大統領が、今回米軍基地の増設を受け入れた理由である。マルコス大統領の父親(元マルコス大統領)は、スペイン統治時代のプランテーション(大規模土地所有)の土地を、土地なし農民に分け与え、自作農を増やす政策を打ち出したが、アメリカの反発を受け、逮捕されてアメリカに連行され、失脚した人物である。つまりフィリピンは、今も日本と同じアメリカの従属国なのである。
同じ従属国ではあるが、マルコス大統領は日本と違い、米中の間でバランス外交を目指している。したがって今回の訪日で岸田首相とマルコス大統領との会談の行方を、世界が、とりわけ中国が注目しているのである。確かなことは習近平の強国外交が中立の立ち位置を目指している小国フィリピンを、アメリカの側に追いやる愚策であることだ。
習近平ファシスト政権が内外で孤立しつつあることは、中国覇権主義の軍事的暴走を招く可能性を指摘しなければならない。習近平には米中覇権争奪の中で、小国を中立の立ち位置に立たせるという、戦略的で柔軟な外交が強国路線ゆえに取れない、これは彼の弱点である。ゆえにマルコス大統領のバランス外交は実現できそうもないのである。
#マルコス外交
1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)で、マルコス大統領は「我々は東南アジア諸国連合(ASEAN)として、(米中の)対立から距離を置くと決意している。アジア太平洋、インド太平洋の未来は我々にしか決められない」と述べた。そこには大国間の覇権争奪に巻き込まれると、ウクライナのように「使い捨ての駒」ように扱われてはいけない、との小国の生きぬく知恵が表れている。
フィリピンと東南アジアを戦略的競争の渦中に置こうとする圧力が双方からある中で、マルコス大統領は、在フィリピンの米軍の基地を数か所に増やすことを受け入れた。彼は、アメリカの「スイングステート(揺れ動く州)」のように陣取りの対象にさせないよう距離を置く、といいながら、米軍基地設置を受け入れたのは理由がある。
フィリピンの周辺には南シナ海、台湾という二つの地政学的な対立の火種がある。マルコス大統領はこれらの地域紛争に巻き込まれることを望んでいないが、強大な軍事力を背景に「群狼外交」を進める中国の力の前に、南シナ海のフィリピンの諸島が現実に中国に奪われている。つまり中国・フィリピン間の軍事力の差をフィリピン政府は痛感し、国内に米軍基地を増設することで中国軍の脅威に対抗するほかないということである。
マルコス大統領は1月の訪中で、中国から再生可能エネルギーなど計228億ドル(約3兆円)の投資の約束を取り付けたが、この約束も履行される保証はない。中国に融和的な政策を取ったドゥテルテ前政権時代にも中国は多額の投資を約束したが、実現したのはほんの一部であった。それは「約束の罠」であったが、実際には履行されなかった。軍事的にたやすく占領できる国に、多額の金を投じるほど覇権主義の中国は甘くないのである。
これがバランス外交を政治信条とするマルコス大統領が、今回米軍基地の増設を受け入れた理由である。マルコス大統領の父親(元マルコス大統領)は、スペイン統治時代のプランテーション(大規模土地所有)の土地を、土地なし農民に分け与え、自作農を増やす政策を打ち出したが、アメリカの反発を受け、逮捕されてアメリカに連行され、失脚した人物である。つまりフィリピンは、今も日本と同じアメリカの従属国なのである。
同じ従属国ではあるが、マルコス大統領は日本と違い、米中の間でバランス外交を目指している。したがって今回の訪日で岸田首相とマルコス大統領との会談の行方を、世界が、とりわけ中国が注目しているのである。確かなことは習近平の強国外交が中立の立ち位置を目指している小国フィリピンを、アメリカの側に追いやる愚策であることだ。
習近平ファシスト政権が内外で孤立しつつあることは、中国覇権主義の軍事的暴走を招く可能性を指摘しなければならない。習近平には米中覇権争奪の中で、小国を中立の立ち位置に立たせるという、戦略的で柔軟な外交が強国路線ゆえに取れない、これは彼の弱点である。ゆえにマルコス大統領のバランス外交は実現できそうもないのである。
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