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タリバンに渡った米製兵器の持つ戦略的影響力!

アフガン政権崩壊でタリバンに大量に渡った最新式の米製兵器は、今後の世界の軍事戦略にどのような影響を与えるのだろうか?報道されている範囲で見ると、以下の通りである。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は17日、タリバンがアフガン軍から大量の米国製武器を奪ったと認め「彼らが返還するとも思えない」と語った。
流出した米製兵器の中には、無人偵察機「スキャンイーグル」や多目的ヘリコプター「ブラックホーク」が含まれると報じられている。

米共和党の上院議員25人は18日、オースティン国防長官への書簡で「ハイテク装備がタリバンとその仲間の手に渡ったことは受け入れがたい」と非難した。アメリカでは今回の失敗でバイデン大統領の支持率が急落している。タリバンに渡った最新兵器が、タリバン政権の外貨獲得のために、イランや中国・ロシアに売却されれば、アメリカの安全保障にとっても非常に大きな打撃となる。

地上戦能力の向上に直結する武器も大量に流出している。アメリカでの報道によると、アメリカはアフガン軍にライフル銃など軽火器60万丁、車両7万6千台、暗視ゴーグル1万6千個などを提供してきた。タリバンの戦闘機動力や夜戦能力が高まるのは確実であるだけでなく、イスラム過激派(=テロ組織)の攻撃力が飛躍的に高まることになる。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アメリカが大量の弾薬や対戦車ミサイルなども供給してきたとし、過去20年で800億ドル(約8.8兆円)以上をアフガン政府軍のために費やしたと報じている。

タリバンがアフガンを掌握したことで、テロ活動で連携するアルカイダが勢いづくとの懸念は先進国や周辺諸国には強くある。アフガンがイスラム過激派の戦闘員獲得や訓練拠点に再びなりかねない、とみる向きもある。クラッパー元米国家情報長官は米CNNに、アルカイダの多くの戦闘員がアフガンに戻るのは「時間の問題だ」と述べ、組織の再建を進めるとの見方を示す。

アフガンからは、旧政府職員や警察官、治安関係者、大使館関係者などが国外脱出を目指しており、タリバン政府は人材の欠如に直面する。タリバンがイスラム過激派やイランに人材の派遣を求めるのは必至で、中国もタリバンを懐柔して抱き込もうとしているので、アメリカの戦略的打撃は軍事・外交面で非常に大きいのである。
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アフガン崩壊はアメリカの占領統治の失敗!

アメリカの占領統治が成功したのは日本だけだ。日本統治の場合は経済学者や社会学者を動員して、日本軍国主義の社会・経済基盤を解体する科学的なやり方がとられた。GHQは地主階級をなくすために土地改革、財閥解体、労働改革などの社会改革を行い、日本経済が急速に発展・復興する改革を行った。

アフガンの場合は、反テロ戦争で20年間も米軍が闘っても統治できなかったのは、アフガン社会の特殊性を分析しなかったからである。アフガンは原始時代の氏族社会(=部族社会)であり、原始時代の古典的宗教=イスラム原理主義を基盤した、部族連合的国家であり、国家意識すら存在しなかった。

イスラム原理主義は砂漠地帯で生産力が低い地域の奴隷制時代の原始的宗教であり、アメリカがこの国を近代化するには、宗教改革(民主化と政教分離)と農業生産力を上げる政策と、手工業を発展させることが不可欠であった。つまりアメリカはアフガン社会の特殊性をこそ分析すべきであった。

しかしアメリカ軍は空爆で部族社会を破壊し、敵を生み出しただけであった。アフガンの勝利はアメリカの失敗ゆえであり、タリバンの統治がよかったわけではない。アフガンの民衆、特に女性は平等と自由を求めている。

ソ連の北朝鮮の社会改革が失敗したのは、コミンテルンが500年続いた李王朝=奴隷制社会と儒教思想を理解せず、社会改革を目指したが、金日成の反対で無責任に放棄した結果、現在の奴隷制の大王が支配する国家=北朝鮮が出来上がってしまった。高度に武装した奴隷制国家(=テロ国家)が地球上に北朝鮮とアフガンの2つが生まれたことになる。

国際戦争の形で(=社会革命ではなく)占領の形で社会改革が成功した例は日本だけだが、これは日本では絶対主義的天皇制の下であれ、100%近い教育が行われ、文盲がほとんどいなかったのに対し、アフガンは満足な教育さえ行われていなかったこと、とアメリカが統治するうえで、アフガンの部族社会の特殊性を分析しなかった結果である。ゆえに勝利したタリバンが明日のアフガンの希望となるわけではない。これは北朝鮮の民衆にも言えることだ。

軍事的に見ても撤兵は技術的に難しいことは歴史が教えている。ところがバイデン大統領は統治上の軍事的・政治的配慮なしにアフガンからの撤兵を唐突に発表した。無責任で愚かというしかない。

撤兵後のアフガンが、どの覇権国に掌握されるかの認識もなく、米軍の撤兵を発表したバイデン大統領への批判が高まるのは当然で、アメリカは政治指導者の人材の枯渇をこそ早急に克服しなければ覇権の喪失は不可避である。

今後アフガン政権と友好的に話し合えるのは、中国とロシアとイランだけとなった。日本政府はイランの協力を得て、在アフガン日本人救出とアフガンの今後の民主化を急ぎ働きかけるべきであろう。
#米のアフガン撤兵
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