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中東の主導権は中国・ロシアが握った

イランとサウジアラビアが、7年に及ぶ断交を解消し、外交関係を正常化させることで合意した。アメリカの中東への影響力の低下が指摘されるなか、合意を橋渡しした中国の目的は、どこにあるのかが注目されている。

今回、3カ国が連名で発表した共同声明には「サウジとイランの友好を支持する習近平(シーチンピン)国家主席の積極的な提案に両国が応じた」とわざわざ記され、中国の役割が強調された。合意後、王氏は中国メディアに「重要な成果が得られた。対話の勝利、平和の勝利だ」と勝ち誇った。

中東の地域大国であるサウジアラビアとイランが外交関係の正常化で合意したことは、イスラム教シーアー派とスンニ派を対立させ、イランを孤立させるというイスラエルとアメリカ中東戦略にとって、外交的敗北といえる。中国の狙いは、スンニ派アラブ諸国とイスラエルの関係改善を進め、イランを孤立させるというアメリカの中東外交の破綻にあったといえる。

アメリカ国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は10日、記者団に「地域の緊張を緩和するあらゆる努力を支持する」と述べて合意を歓迎しつつ、アメリカは「直接関与していなかった」と語った。カービー調整官は合意の効果が続くかどうかは「様子見だ」としつつ、「イランが本当に合意を守るかまだ分からない。イランは通常、約束を守るような政権ではない」と牽制した。

アメリカとサウジは長年、同盟国であったが、バイデン政権下で関係がぎくしゃくしている。特にウクライナ戦争では、中東産油国がロシア・中国陣営に立ち、その非米色が目立っている。ウクライナでのロシアの非道を欧米のメデアが宣伝するたびに「中東では非道が通常の事であった、イラクやアフガンではアメリカ軍は200万人も殺したではないか?」とのサウジ王家からの批判が出ていた。

報道によれば「イスラエル史上最も右寄り」とされる対パレスチナ強硬派のネタニヤフ政権が昨年12月末に発足した後、イスラエル軍はパレスチナ人約80人を殺害した。このため、パレスチナ独立国家の建設をイスラエルとの関係正常化の条件に掲げるサウジ政府が反発し、態度を硬化させて、サウジがイスラエルよりもイランとの和解を優先したとみられている。つまりサウジとイランの関係改善は、アメリカとイスラエルの外交的敗北といえるものである。バイデンの戦略観点の無さが露わになったといえる。

今回のイランとサウジアラビアの関係改善は2022年12月7日から10日まで、中国の習近平国家主席が、サウジアラビアを公式訪問し、中国サウジアラビア首脳会談、中国GCC(湾岸協力会議)サミット、そして初開催となる中国アラブ連盟サミットなど重要な首脳会談に参加したことが布石であった。

世界のエネルギーを握る中東の主導権は、アメリカ側から、サウジに接近した中国と、シリアと連携するロシアの側に移行したことは明らかだ。今後アメリカとイスラエルの側の巻き返しとしての、サウジ・イラン関係を破壊する陰謀・工作が激化するであろう。
#サウジ・イラン関係改善
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イラン人民の抗議行動を断固支持する!

イランで22歳の女性が髪を隠す布「ヘジャブ」の着用が不適切だったとして逮捕された後、急死した事件から19日となる。警察官の暴行を疑う声が上がり、抗議デモは全土に拡大、死者も増え続けている。米ニューヨークを拠点とする国際的な民間団体「ジャーナリスト保護委員会」は25日、事件や抗議行動の報道をめぐり、イランで少なくとも計18人の記者やカメラマンが当局に拘束されたと発表した。

AFP通信は23日、ノルウェーの首都オスロ拠点の人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」が「死者は最低でも50人に達した」と指摘したと報じた。ロイター通信は28日、抗議デモはこれまでに国内の80都市に及んだと報じた。デモ参加者と治安部隊の間では衝突が相次ぎ、死者について、イラン国営テレビは24日に計41人と伝えた一方、ノルウェー拠点の人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は26日、全31州のうち「14州で計76人を確認した」と発表した。

イランの現政権は、かって労働者が1979年のイラン革命でパーレビ王政を打倒すした後、イスラム原理主義シーア派の坊主が政権を横取りした。いわゆる反動復古の政権である。イスラム原理主義は奴隷制社会の時代の宗教なので、男女差別が酷い。イラン人民の今回の抗議活動は、民主化闘争といえるものであり、したがって正義の闘争である。

中東でイスラム原理主義のテロが続発しているが、これは社会改革に対し、宗教改革が進んでいない結果であり、アフガニスタンにおいては女性は学校にも行けず、女性が髪を見せると鞭でしばかれる。女性は社会的地位は低いし働けない。基本的に女性は家内奴隷の地位にある。

イラン政府の最高権力はイスラム教原理主義(シーアー派)のハメネイ師で、彼は現在のイラン人民の抗議行動は「アメリカやイスラエルの画策です」と語っている。今回のイラン人民のデモ隊の中には、政権の正当性に触れる声も多く出ており、イラン政府は窮地に陥っている。

イスラム教原理主義の指導者は、社会の民主化の要求に沿い宗教改革に取り組むべきであり、奴隷制の時代の戒律は、より民主的に改革しなければ政権の維持は難しくなっていることを知らねばならない。中東は砂漠が多く、自然環境が厳しい、ゆえに農業生産力が低い奴隷制時代の宗教が「飲酒を禁止」したりするように戒律が厳しいものになった。
イラン人民の今回の抗議闘争は正義の階級闘争であり、奴隷制時代の古臭い宗教政権は窮地に陥っているのである。
#イスラム教シーアー派 #イラン人民の抗議闘争

中東の戦略的価値の低下でイスラエルが戦略的危機に!

環境問題重視のバイデン米政権にあっては、化石燃料資源=石油の世界最大の産地である中東の戦略的価値は低下した。バイデン政権は中東に駐留する米軍約5万人を削減していく方針である。

米軍の撤退の空白を埋めるのはイランであり、その背後にいるロシアと中国だ。イスラエルは自国防衛に当たり戦略的岐路にある。アメリカに代わりロシアに接近するのか?イランの影響下にあるパレスチナのハマスなどの勢力をたたいておけねばならない。

今回のイスラエルのパレスチナ攻撃は、国連安保理の無力をさらけ出し、和平を中介したエジプトとロシアの影響力を強めることになる。イスラエルのネタニヤフ首相は連立政権の組閣もできない国内の混乱の中で、自己の政治生命を延命するために今回の戦争を企み、同時にロシアへの接近の機会とした。

石油の自給を達成したアメリカにとって、中東の戦略的価値は低下しても、欧州や日本などは今も中東の石油に大きく依存している。アメリカの撤兵した後の中東はイスラムシーアー派とスン二派(=イランとサウジ)の対立、イスラエルとパレスチナ・イランの対立など、中東は戦乱の時代に入ることになる。

世界の多極化とは、軍事力がすべてを決める時代の到来を意味している。戦略兵器である核兵器を保持している国のみ自立でき、日本のように戦略兵器を持たない国は従属国として戦争の使い捨てにされる時代なのである。

イスラエルは自立し、核兵器を保持しているので防衛は万全でも、日本のように従属国は多極化の中で安全保障を考えると、対米自立し、戦略兵器を保持する以外に国を守すすべはないことを知らねばならない。

中東の情勢が教えているのは、多極化の時代には国防の面で自立し、戦略兵器を持たなければ悲惨な事態になるということだ。パレスチナ人民はイスラエルの空爆の前に無力をさらけ出した。

米中の覇権争いが戦争になるとき、日本もパレスチナのような戦場の悲劇に見舞われることを指摘しなければならない。現憲法は従属憲法であり、決して「平和憲法」ではないことを知るべきだ。自衛隊は攻撃兵器を保持せず。防衛兵器のみ所持している。従属国の軍隊はあくまでも奇形的にされているのだ。

平和の名で従属憲法を守れという人たちは、日本を亡国へと導こうとしているのである。パレスチナの悲惨な姿は、近い将来の日本の姿なのである。日本は対米自立し、戦略兵器を保持して初めて国防が確立するのである。

中東の戦略的価値の低下の中で戦乱の時代に!

バイデン米政権は環境問題を重視し、脱炭素化を進めている。アメリカは石油の自給をほぼ達成しているし、環境問題重視のバイデン政権にあっては、油田地帯である中東の戦略的価値は急速に低下している。

報道によると、ワシントンの米紙政治記者は「バイデン政権の安保チーム高官は『中東はもう重要度上位3位に入らない』と、よく口にする。重要度トップは中国がある東アジアで、ロシアを抱えるロシアが第2位だ。第3位は移民問題関連で中南米となると、たしかに今更中東に深入りする理由はない」(選択5月号記事「米国中東大撤収が招く惨事」)と語ったと報じている。

バイデン政権は4月に、9月11日までにアフガニスタンから米軍を撤退させることを決めた。米軍の現在の中東駐留は約5万人で、これをさらに削減する意向である。つまりバイデン政権は戦略的価値の低下している中東から兵力を撤退する腹なのである。米兵の撤退は反米勢力を勢いづかせている。

中東でのイランとそれを支援する中国・ロシアの影響力が増すであろう。米軍の重しがなくなるのだから、中東で戦火が火を噴くのは当然だ。エルサレムの扱いをめぐり、パレスチナとイスラエルが戦争状態になったのは、中東の不安定化を反映しているのである。

イランの核開発をめぐりイスラエルがイランを攻撃する可能性も高まっている。アフガニスタンにおいて、イスラム原理主義のタリバンが息を吹き返す可能性も高い。シーア派のイランと、スンニ派のサウジの対立も激化する可能性がある。アメリカの一極支配の終わりは、中東をまさに戦乱の時代にしつつある。覇権国の相対的衰退が中東を戦火に巻き込みつつあることを見てとらえなければならない。こうした傾向は世界的な流れであり、世界は戦争の時代を迎えたといえる。
#戦争の時代

中国とイランの同盟が中東の主要矛盾を変えた!

中国がイランに対し4000億ドルの資金協力の見返りにペルシャ湾のキーシュ島の25年間租借と中国兵5000人の駐留を受け入れ、実質的軍事同盟に踏み出したことは、中東の主要矛盾を変えるだけの衝撃を引き起こした。

それまではイスラエルと中東諸国・人民の矛盾がこの地域の主要な矛盾であったが、核開発を進めるイランを中国が支援するとなると、イランのイスラム教シーアー派とサウジやUAEなどのイスラム教スンニ派とイスラエル連合の矛盾が主要な矛盾にかわった。イランの核開発と弾道ミサイル開発はイスラエルに脅威であり、同時にイランとペルシャ湾をはさんで対峙するAUEやサウジにもイランの脅威は倍加する。

8月13日トランプ米大統領はアメリカの中介でUAEとイスラエルが関係正常化合意したことを発表した。トランプ政権はイラン封じ込めの大包囲網を築こうとしているように見える。

今回のUAEとイスラエルの合意には、イスラエルがヨルダン川西岸の併合を停止することが含まれているとされているので、イスラエルはイラン・中国を敵とする主要矛盾に対処するため譲歩を強いられたようである。トランプ大統領は今回の合意で米軍が中東にいる必要はなくなったと語った。これは大統領選に向けた発言とみられている。実際にUAEに駐留する米軍が撤兵するかどうかはわからない。

中国はイランとの戦略的関係確立によって、イランだけでなく、イラク・シリア・レバノンにも影響力を増すことになり、これは「一帯一路」の戦略的成果といえる。中東の主要矛盾が、中国の支援するイラン(=イスラム教シーアー派)とアメリカの支援するイスラエルとUAE・サウジ(=イスラム教スン二派)連合の対立と今後なっていくであろう。

外交に携わる者にとって、アメリカと中国の覇権争いが、世界の戦略関係を変えつつあることを見て取ることが重要なこととなった。
#中国イランの戦略関係 #中東の主要矛盾
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