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崩壊したグローバル経済と世界の多極化の中の外交

旧ソ連の崩壊と中国の走資派権力により、冷戦が集結し、世界はドル経済圏を中心としたグローバル経済が生まれた。しかしアメリカの一極支配は長くは続かなった。世界の多極化は、誰かの政治的意図で進んでいるのではない。それは資本主義の不均等発展の法則の結果であり、グローバル経済が多極化の経済的基礎を作り上げたのである。

多極化の一つは、欧州におけるユーロ経済圏が東欧諸国を飲み込んで東に拡大し始めたこと、中国経済が多国籍企業の輸出基地として成長したこと、さらには、台湾やインド、インドネシア、ブラジルなどが経済成長を遂げたこと、つまりグローバル経済の広がりが世界の多極化を促したのである。

アメリカはかって日本経済が世界第2位に発展するや、プラザ合意とルーブル合意で円高を作り出し、日本のバブル経済を演出し、日本の経済的挑戦を打ち砕いた。ユーロの挑戦に対しては、ウクライナを使いロシアを挑発して、ウクライナ侵攻へと誘い込み、欧州が安上がりなロシア産エネルギーに依存することを打ち砕いた。欧州は再び分断と対立に立ち帰ることになっり、ユーロは拡大の芽を摘まれた。

中国の経済的挑戦に対して、アメリカは「競争相手」として位置付けて、先端技術からの隔離政策を打ち出し、日本同様に屈服を迫った。中国は世界の工場であるのでドル経済圏からは抜け出せないとのアメリカ側の読みがあった。しかし重要なことは、日本はアメリカン従属国であったが、中国は自立した官僚独裁の国家であることだ。

中国の戦略は、ウクライナ戦争を利用して、ひそかにロシアを支援し、戦争を泥沼にして欧米を経済的に疲弊させることであり、巨大な軍拡と軍事的恫喝で台湾を揺さぶり、国民党に浸透して、平和的に台湾を手に入れることである。台湾には中国軍幹部が「宝島」と呼ぶ世界一の半導体産業があり、アメリカ製の兵器が存在している。台湾の平和的占領はアメリカの先端技術からの隔離をたやすく打破することができる。

台湾の国民の中に生じている「ウクライナのように、台湾はアメリカの代理戦争の捨て駒にされるのではないのか?」との不安を、中国政府はうまく利用し、台湾の野党国民党内に浸透している。つまりアメリカのドル支配維持の戦略を、中国がうまく逆利用して、覇権を奪いつつある、というのが現局面の世界情勢の特徴なのである。

しかし我々の見るところ、中国は基本的に外国企業への場所貸し経済である点が、経済的弱みであり、アメリカとたもとを分かれつことはできそうにない。習近平政権は独裁強化で反対派を粛清したことで国内的に孤立しており、官僚独裁は極めて歪みと孤立を増している。それゆえ習近平は「共同富裕」の大衆受けする社会主義的スローガンを掲げざるを得ないのである。こうした習近平の統治方法では、内陸部の資本主義化は極めて制限されたものにならざるを得ず。早晩中国経済は財政・金融危機を迎えるであろう。

つまり世界の多極化は、アメリカのドル支配が弱りつつあるが、巻き返しもあるので、しばらくは隠然とした形で多極化が進むことになるであろう。アメリカ国内の世界覇権に利益を受ける金融資本と、在来の産業資本との矛盾は、アメリカ国内の分裂と対立を深めており、外国にあるすべての米軍基地を撤退させるというトランプ派の「アメリカ第一主義」は未だ衰えていない。アメリカの一極世界支配は今後難しくなっていくであろう。

韓国の新政権が反日路線を転換し、日本をパートナーと呼び始めたのは、アメリカの代理戦争路線があり、また近く在韓米軍が引き上げることが避けられない状況の下での、安全保障を考慮し始めたことであり、北朝鮮の核開発の下で、日本に接近するほかに安全保障を図る方途がないところから選んだ、生き残り策なのである。

日本政府は、いつまでも対米従属では一国の安全保障を図ることが難しい時代であることを認識して、対米自立、自由と民主派支持の、自主的外交が不可欠であることを自覚すべき時なのである。ウクライナ戦争の隠された反ユーロ戦略を読み取ることができず、うかつにも、ウクライナ全面支持で、日本は3正面に核保有の敵を持つ戦略的窮地を招いた誤りを指摘しなければならない。世界の多極化は、複雑怪奇な外交戦の時代であり、無神経な対米追随は、ウクライナのような代理戦争の捨て駒として、亡国を招きかねないことを指摘しなければならない。
#多極化の中の外交
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習近平の大軍拡の政治的狙いを見抜け!

中国で5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕し、2023年の国防費を前年比7.2%増の1兆5537億元(約30兆5500億円)とする予算案が提出された。中国は習近平の強国路線・中華海洋帝国建設の夢を正当化するために、中国への脅威が「エスカレート」していると主張し、国防費の伸びが7.2%だったことについて、中国軍は「アメリカなどと比べると、比較的低い水準だ」と主張している。日本の防衛予算の数倍にまで増大している中国の国防費を、たした額ではないと見せかけようとしている。

李首相は活動報告で「(27年の)人民解放軍創立100周年の奮闘目標の実現に向け、それぞれの任務を完成させる。国防強化プロジェクトの実施や国防科学技術能力の建設を加速する」と述べた。中国は人民解放軍の現代化と「世界一流の軍隊」にする目標を掲げているが、軍備強化を加速する節目として27年の建軍100週年を置いている。

アメリカ中央情報局(CIA)のバーンズ長官が「習近平国家主席は27年までに台湾侵攻の準備が整うよう指示している」と発言したことも根拠がある。中国は空母4隻体制などアメリカに対抗できる海軍力を目指し、建艦強化を着々と進めている。

しかし重要なのは、この中国の軍拡の脅威を強調することではなく、その政治的狙いを見抜くことである。中国は「戦わずに勝つ」兵法を確立した、孫子を生み出した国である。習近平の軍拡の政治的狙いを見ておくべきである。中国政府はウクライナ戦争で台湾国民の中に、「台湾もウクライナのように代理戦争の使い捨ての駒にされるのではないか?」との疑惑が生まれている。これを習近平政権が見逃すはずもない。

中国政府は台湾の野党国民党に資金でテコ入れし、中国の一部との認識を台湾民衆の中に植え付けており、最近の地方選では国民党が圧勝するまでになっている。台湾に国民党の政権が生まれれば、中国は戦争をせずとも平和的に台湾を手に入れることができる。台湾はアメリカが仕掛けた半導体などの先端産業の隔離政策を打破する世界一の半導体産業が存在している。つまり中国政府の狂気じみた建艦は、台湾を闘わずに手に入れるための布石なのである。

松野博一官房長官は6日の記者会見で中国による国防費の増加に懸念を示した。「十分な透明性を欠いたまま軍事力を広範かつ急速に増強させている」と指摘した。同氏は「中国は東シナ海、南シナ海などで力による一方的な現状変更の試みを強化している」と述べた。「日本と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的な挑戦だ」と語った。

「戦略的挑戦」というだけではだめで、その政治的狙いを見抜くべきである。日本は台湾やベトナムやインドネシアやフィリピンを習近平ファシスト政権に対抗する統一戦線構築の外交を展開すべきなのである。

台湾は、近年中国軍の軍事演習で軍事的恫喝を受け続けている。ベトナムでは、漁船が巨大な中国漁船に体当たりされたり、放水されたりと、漁場から力で追い出されている。インドネシアでは違法操業の中国漁船を拿捕したら、中国の艦船に拿捕した漁船を奪い返される事件が頻発している。フィリピンではEEZ内のミスチーフ礁を中国に奪われ、人工島に作り替えられた。また漁船にレザー光線を浴びせ、沈没させたり、やりたい放題をやられている。フィリピンのマルコス政権が、アメリカ軍の基地を4か所増やすことを受け入れたのは、こうした中国軍の横暴があるからだ。

日本は、東南アジアの小国を団結させ、その国防力強化のテコ入れをすることが、自衛隊の国防費を2倍にすること以上に、安上がりで、重要なことなのである。特に台湾の平和的占領を阻止するには、統一戦線構築で台湾の自由と民主を守るスタンスを見せることが重要なのである。
#習近平ファシスト政権 #反中統一戦線

岸田首相のウクライナ訪問希望の軽率!

ウクライナ戦争はもともとウクライナを自己の政治利権としてきたバイデン大統領が、極右クーデターを画策し、その政権がウクライナ国内のロシア人への攻撃とNATO加入の脅しで、プーチン政権を挑発した。

今回ロシアが占領した地域はロシア人が多く住む地域であり、ロシアは見捨てるわけにいかない。したがって欧米がウクライナの極右政権を支援すればするほど、戦争が長引き原料価格の高騰が続き欧州と日本の経済が疲弊していく。

アメリカ経済は産軍複合体なので戦争で儲かるが、それでも戦争が続くとアメリカは覇権を失うことになる。ウクライナ戦争の継続は、OPECプラスの産油国が原油価格高騰で儲かるということであり、中国はロシアからの安上がりな原油・天然ガス獲得で経済競争に有利になり、覇権獲得に有利に働くのである。ウクライナ戦争の継続は中国覇権主義にとって戦略的好機なのである。

岸田首相は、国内での政権支持率が低迷しているので、外交で点数を稼ぎたいとの思惑からウクライナの首都キーウにG7の政治指導者でただ一人訪問していないこともあり、これは今年のG7首脳会議の議長国の首相としてはまずい、というので岸田首相のキーウ訪問が持ち上がったのだが、これに大御所の森喜朗元首相が反対したことで、岸田の目論見は崩れた。

現在、森喜朗元首相は最大派閥の旧安倍派のまとめ役としての地位にある。森は以前からプーチンロシア大統領とは関係が深い「こんなにウクライナに力を入れてしまって良いのか。ロシアが負けることは、まず考えられない」と岸田首相のキーウ訪問に反対した。

ウクライナはジェレンスキーの側がロシアを挑発して始めた戦争であること、世界のエネルギーをロシア・中国側が握っていること、などからウクライナ戦争が継続すれば、中国が戦略上有利になる中で、岸田首相が反ロシアのスタンスを明確にした結果、日本は3正面に核保有国の敵を持つことになった。

岸田首相が、本当に日本を防衛しようとするなら3正面に敵を置く戦略的愚策は取るべきではない。少なくとも南の尖閣・台湾への侵攻が近くありうるのであるから、北の敵を中立に置く外交が極めて重要となる。つまり岸田のウクライナ全面支持のスタンスは、森には極めて軽率に見えるのであろう。

我々の見るところ岸田首相の外交には、戦略的視点がまるでないのでる。自国が戦略的に不利となる外交は、従属国ゆえであり、アメリカの言いなりだが、そのアメリカでさえ、ウクライナ戦争の継続は、覇権喪失に繋がることを指摘する声が出ているのである。

岸田と同じく戦略観点の無いバイデンは、ロシアのプーチン体制の打倒だけ見て、覇権の維持という視点で欧州経済に打撃となる戦争継続が、自己の覇権喪失に繋がるということが見えなくなっている。これは「木を見て森を見ない」ことであり、このままでは次期大統領選でトランプの「アメリカ第一主義」が再び勝利することもありうるであろう。そうなればアメリカの凋落、中国の覇権獲得が実現しかねないであろう。台湾有事で日本がウクライナのように代理戦争の使い捨ての駒にされる事態もありうるであろう。
#岸田首相のウクライナ訪問

外交の原則は国益優先であるべきだ

日本への天然ガス供給の約1割を占めるロシアのサハリン2の開発には、資金の22.5%を日本の2商社が出してきた(他に欧シェルが27.5%。残りの50%は露ガスプロム)。だが6月30日、プーチン露大統領はサハリン2を完全国有化して日欧を締め出す大統領令を出した。日欧勢は、1か月以内にロシア政府に申請して許可を得ないとガスの利権を失ってしまうことになる。

日本政府はウクライナに防弾チョッキを送ったが、武器の支援をしておらず、岸田首相らが対米従属の一環として、ロシアのウクライナ侵攻による現状変更を批判し、対ロシア経済制裁に参加して来た。サハリン2の国有化はこれへのプーチンの反撃である。

かって日本政府は、イランへのアメリカの経済制裁に協力して、有望な油田の採掘権を放棄したことがある。そのイランの油田は現在中国が保有している。サハリン2も日本の権益が中国に渡ることになる可能性がある。

5月の日米首脳会談で岸田首相がバイデン大統領に「台湾有事には、アメリカと一緒にしかるべき役割を果たす。」という趣旨の発言した。この発言をアメリカ側は台湾有事での自衛隊の積極的関与の約束、と受け止めている。自民党内では「首相が深く考えないまま口にした」と説明されているが、一国の安全保障にかかわる発言はもっと慎重にしてもらいたいものだ。少なくとも国会で説明・議論した上で行ってほしい。

なんでもアメリカ言いなりでは国益は守れない。自民党の外交にはすべてアメリカ優先で、自国の国益を優先するという原則に欠けている。フランスやドイツがロシアからのエネルギ輸入でルーブルでの支払いに応じるなどしている、日本外交にも柔軟性やしたたかさがあってもいいのではないのか?

かって田中元首相がアメリカの意向を無視し訪中し日中国交回復したことで、「裏切りだ」(キシンジャー国務長官)と決めつけられアメリカに報復され、ロッキード事件で刑事被告人にさせられて以後、日本の政治家のアメリカの顔色を読む従属外交がひどくなった。従属外交一辺倒ではロシアや中国になめられてばかりだ。

最近中国の軍艦とロシア軍艦が尖閣諸島の接続水域に挑発的に侵入した。日本政府が中国政府に抗議したら、中国側の報道官が「日本政府は発言を慎め」と高圧的に反論した。最近中国とロシアは爆撃機の編隊を日本周辺に飛行させ、艦隊や情報収集艦を日本列島を周回させるなど、軍事的威圧を強めている。アメリカ言いなりの日本外交は完全になめられているのである。政治がアメリカ追随ではなく国益を守るという強い決意を示すべき時である。
#対米従属外交

軍事力による現状変更に反対する外交原則を!

 中ロの独裁軍事大国が同盟し、台湾とウクライナへの同時侵略体制を強化している下では、日本政府は軍事力による現状変更反対の外交原則を打ち出すべきだ。とりわけアジアでは大国中国が各個撃破の策を行えば、台湾だけでなく日本や東南アジアの小国はすべて占領されるのは明らかだ。

 アメリカが国内の分断と対立で覇権を維持できなくなりつつある下では、日本の防衛は今ほど危ういことはない。歴史が教えているのは小国が大国に対し国防を確立するには合従連衡の策で大国の侵略に当たるほかない。

 日本政府は軍事力による国境線の現状変更に反対する「連衡」の策を実施すべきである。この場合韓国のように大国中国の覇権主義にすり寄る外交がなりよりも危険で、亡国の外交であることをはっきりと指摘すべきだ。

 米ソの冷戦時代と違い、世界は経済的に相互依存を強めており、大国である中国といえども世界から孤立しては経済がもたない。ゆえにアジアの諸小国の外交的連衡が重要となる。

 中国の現政権が生まれてから70年間も一度も統治したことの無い台湾が「中国の内政問題」との主張は成り立たない。中国政府の論理に従えば過去に中国王朝に朝貢していた日本も「統一」の名のもとに侵略できることになる。

 小国の過去の歴史がどうであれ、軍事力による独立と主権の侵害(=現状変更)に反対する外交原則でアジアの小国の連携を強化していく外交が求められている。戦後日本外交はアメリカの従属国として、アメリカの指揮棒にしたがっておれば平和が守れたが、今やアメリカに中ロの軍事力を押さえるだけの力がなくなりつつある。

 習近平ファシスト政権に合従連衡の策で対抗する外交戦略が必要となっている。もはや「あいまい戦略」が通用する時代ではないし、アメリカ依存の平和も難しい。当面は台湾との関係を軍事力による現状変更に反対する共同防衛協力関係を結んでいくことが重要である。「唇亡べば歯寒し」のたとえのように、台湾が亡べば、日本の防衛も危ういのである。
#日本の外交戦略
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