米と中・ロ首脳との会談の意味するもの
今週、バイデン・習会談が行われ、また米中央情報局(CIA)のバーンズ長官とロシアの対外情報庁(SVR)のナルイシキン長官が14日、トルコ・アンカラで会談した。この2つの会談は極めて興味深いものである。
バイデンと習は14日、インドネシア・バリ島での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、3時間超にわたり会談した。バイデン政権発足後、両首脳の対面での会談は初めてだった。アメリカ側は台湾問題での互いの「レッドライン」(越えてはならない一線)を探ることに主眼を置いたが、習氏は会談で「台湾問題こそが、最も越えられないレッドラインだ」と主張。議論は全くの平行線をたどった。
他方、 ウクライナ情勢をめぐり、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官とロシアの対外情報庁(SVR)のナルイシキン長官が14日、トルコ・アンカラで会談した。ロイター通信などが報じたところでは、2月のロシアのウクライナ侵攻以来、最も高いレベルでの米ロ高官の会談とみられる。核兵器使用の脅しを繰り返すロシアに対して、バーンズ氏が「核使用の代償とエスカレートのリスク」を伝えることが目的だったという。
つまりアメリカ外交の直面する課題が、ウクライナ戦争でのロシアの核使用阻止と中国の早期台湾進攻を阻止したい、との2つであることを示している。ウクライナでの核使用はすなわち戦争のエスカレートを意味し、台湾進攻は中国とアメリカの経済関係の破たんを意味するだけでなく、世界大戦に繋がる戦略的問題である。
ロシアはウクライナ戦線で欧米の先端兵器の軍事援助で不利に立たされており、追い詰めているので「核は使うな」といっても、プーチンは他に打つ手がなければ戦術核兵器を使うことは避けられない。戦線を膠着状態に置き、停戦に持ち込む朝鮮半島方式は、最もあり得る戦術的選択なのである。
中国の台湾進攻は、習近平が内政で行き詰ったとき取りうる軍事的解決であり、この点での主導権は中国側にある。互いにデッドラインを主張し合うことは初めから分かっていた。会談後バイデンによれば「台湾侵攻は差し迫っていない」と指摘しているので、アメリカの首脳会談の狙いは、台湾侵攻の早期可能性を探るのが目的であったと見てよいであろう。
中国における習近平の個人独裁体制確立後の経済路線が失敗した3選の終わりごろ、つまり4年以上後ぐらいに侵攻の可能性が最も高いとみられる。しかし中国側にすれば、ウクライナ戦争で欧米が手を取られているうちがチャンスであり、戦争でロシアが疲弊し、プーチン体制が崩壊した後では、中国とロシアの同盟関係が続いている保証はなく、したがって引き続き早期の侵攻の可能性は高いとみられる。したがってバイデンの「台湾侵攻は差し迫っていない」との判断は気休めでしかない。
とりわけ中間選挙で明らかになった、アメリカの内政が対立と分断を深めている中では、中国側に台湾早期侵攻の好機との判断がありうる。国際情勢の特徴は極めて流動化しており、経済危機と戦争の危機が同時に進行する情勢下においては、政治家の予想や見通しなど、何らあてにはならないと思うべきである。
# 米と中ロ首脳との会談
バイデンと習は14日、インドネシア・バリ島での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、3時間超にわたり会談した。バイデン政権発足後、両首脳の対面での会談は初めてだった。アメリカ側は台湾問題での互いの「レッドライン」(越えてはならない一線)を探ることに主眼を置いたが、習氏は会談で「台湾問題こそが、最も越えられないレッドラインだ」と主張。議論は全くの平行線をたどった。
他方、 ウクライナ情勢をめぐり、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官とロシアの対外情報庁(SVR)のナルイシキン長官が14日、トルコ・アンカラで会談した。ロイター通信などが報じたところでは、2月のロシアのウクライナ侵攻以来、最も高いレベルでの米ロ高官の会談とみられる。核兵器使用の脅しを繰り返すロシアに対して、バーンズ氏が「核使用の代償とエスカレートのリスク」を伝えることが目的だったという。
つまりアメリカ外交の直面する課題が、ウクライナ戦争でのロシアの核使用阻止と中国の早期台湾進攻を阻止したい、との2つであることを示している。ウクライナでの核使用はすなわち戦争のエスカレートを意味し、台湾進攻は中国とアメリカの経済関係の破たんを意味するだけでなく、世界大戦に繋がる戦略的問題である。
ロシアはウクライナ戦線で欧米の先端兵器の軍事援助で不利に立たされており、追い詰めているので「核は使うな」といっても、プーチンは他に打つ手がなければ戦術核兵器を使うことは避けられない。戦線を膠着状態に置き、停戦に持ち込む朝鮮半島方式は、最もあり得る戦術的選択なのである。
中国の台湾進攻は、習近平が内政で行き詰ったとき取りうる軍事的解決であり、この点での主導権は中国側にある。互いにデッドラインを主張し合うことは初めから分かっていた。会談後バイデンによれば「台湾侵攻は差し迫っていない」と指摘しているので、アメリカの首脳会談の狙いは、台湾侵攻の早期可能性を探るのが目的であったと見てよいであろう。
中国における習近平の個人独裁体制確立後の経済路線が失敗した3選の終わりごろ、つまり4年以上後ぐらいに侵攻の可能性が最も高いとみられる。しかし中国側にすれば、ウクライナ戦争で欧米が手を取られているうちがチャンスであり、戦争でロシアが疲弊し、プーチン体制が崩壊した後では、中国とロシアの同盟関係が続いている保証はなく、したがって引き続き早期の侵攻の可能性は高いとみられる。したがってバイデンの「台湾侵攻は差し迫っていない」との判断は気休めでしかない。
とりわけ中間選挙で明らかになった、アメリカの内政が対立と分断を深めている中では、中国側に台湾早期侵攻の好機との判断がありうる。国際情勢の特徴は極めて流動化しており、経済危機と戦争の危機が同時に進行する情勢下においては、政治家の予想や見通しなど、何らあてにはならないと思うべきである。
# 米と中ロ首脳との会談

妥協が難しいウクライナ消耗戦
ロシアのプーチン大統領は19日に訪問したイランの首都テヘランで、イランの最高指導者ハメネイ師やライシ大統領と会談した。ロシアが2月に始めたウクライナ侵攻をめぐって足並みをそろえ、米国に対抗していく姿勢で一致した。
プーチン氏はハメネイ師との会談で、ウクライナ侵攻について「西側諸国の態度が我々に反撃という選択肢を取らせた」と主張。米欧による対ロシア制裁が「原油価格の高騰や食料危機といった逆効果を招いている」と語った。
ハメネイ師は「戦争で一般市民が苦しむことは望まない」と述べる一方で、北大西洋条約機構(NATO)を「危険な存在だ」と指摘。「もしロシアが主導権を取っていなければ、彼らが戦争を仕掛けてきただろう」と強調した。
18日付米紙ニューヨーク・タイムズは、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍への支援でイラン政府が最大300機の無人機を供与する準備を進め、月内にもロシア兵の訓練を始める可能性があると、複数の米政府当局者の話として報じた。
南米パラグアイのカノ外務副大臣は20日、同国で21日から開かれる南米南部共同市場(メルコスール)首脳会議へのウクライナのゼレンスキー大統領からのオンラインでの参加要請を断ったと明らかにした。地元メディアなどが伝えた。
バイデン米大統領も出席した中東、湾岸協力会議(GCC)の拡大首脳会議は16日、終了後に声明を発表し「エネルギーを巡る安全保障と市場安定化の重要性」を強調した。バイデン氏が主要産油国に期待した原油増産に関する新たな具体策への言及はなく、原油の高騰は続くとみられる。ドイツへのロシアの天然ガス供給はストップしており、欧州のエネルギー危機は冬に向けて深刻化する。
つまりユーロ圏の拡大を阻止するためにバイデンが仕掛けた挑発によるロシア経済消耗戦は、アジア、中東、中南米、アフリカがロシア・中国側寄りとなり、欧米G7側が資源の高騰で経済制裁を逆に受ける形となり、中国だけが軍事力増強の時間を稼ぎ、戦略的利益を受ける形となっている。
今年秋に中間選挙を控えるアメリカは、ウクライナ戦争を停戦するわけにはいかない。ロシアもNATOのこれ以上の拡大は許さない決意をしており、両陣営にとって経済破綻に向かいつつある事態が続くことになる。このまま第3次世界大戦に突入するのか、双方が妥協を模索するのか?注目される点である。ウクライナのゼレンスキー大統領はNATO加盟でロシアを挑発し、一時は英雄気取りであったが、このまま消耗戦を続ければ、ウクライナは廃墟になる。彼は「亡国の徒」になりつつある。
ロシアのプーチンは以前から旧ソ連領のウクライナが譲れないラインであることを表明していたし、広範なロシア国民はNATOのこれ以上の拡大は許さない、という点でプーチンを固く支持している。むしろ経済危機を背景にした世界的な独裁傾向の高まりが、クーデターで親米国化を図るアメリカの政治手法に世界の指導者が反発している中で、今やロシア側が経済制裁している形になりつつある。アメリカは覇権を失いたくないなら、やがて停戦を選択するほかないであろう。消耗戦は資源を握る独裁国家の方が有利なのである。
#ウクライナ消耗戦
プーチン氏はハメネイ師との会談で、ウクライナ侵攻について「西側諸国の態度が我々に反撃という選択肢を取らせた」と主張。米欧による対ロシア制裁が「原油価格の高騰や食料危機といった逆効果を招いている」と語った。
ハメネイ師は「戦争で一般市民が苦しむことは望まない」と述べる一方で、北大西洋条約機構(NATO)を「危険な存在だ」と指摘。「もしロシアが主導権を取っていなければ、彼らが戦争を仕掛けてきただろう」と強調した。
18日付米紙ニューヨーク・タイムズは、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍への支援でイラン政府が最大300機の無人機を供与する準備を進め、月内にもロシア兵の訓練を始める可能性があると、複数の米政府当局者の話として報じた。
南米パラグアイのカノ外務副大臣は20日、同国で21日から開かれる南米南部共同市場(メルコスール)首脳会議へのウクライナのゼレンスキー大統領からのオンラインでの参加要請を断ったと明らかにした。地元メディアなどが伝えた。
バイデン米大統領も出席した中東、湾岸協力会議(GCC)の拡大首脳会議は16日、終了後に声明を発表し「エネルギーを巡る安全保障と市場安定化の重要性」を強調した。バイデン氏が主要産油国に期待した原油増産に関する新たな具体策への言及はなく、原油の高騰は続くとみられる。ドイツへのロシアの天然ガス供給はストップしており、欧州のエネルギー危機は冬に向けて深刻化する。
つまりユーロ圏の拡大を阻止するためにバイデンが仕掛けた挑発によるロシア経済消耗戦は、アジア、中東、中南米、アフリカがロシア・中国側寄りとなり、欧米G7側が資源の高騰で経済制裁を逆に受ける形となり、中国だけが軍事力増強の時間を稼ぎ、戦略的利益を受ける形となっている。
今年秋に中間選挙を控えるアメリカは、ウクライナ戦争を停戦するわけにはいかない。ロシアもNATOのこれ以上の拡大は許さない決意をしており、両陣営にとって経済破綻に向かいつつある事態が続くことになる。このまま第3次世界大戦に突入するのか、双方が妥協を模索するのか?注目される点である。ウクライナのゼレンスキー大統領はNATO加盟でロシアを挑発し、一時は英雄気取りであったが、このまま消耗戦を続ければ、ウクライナは廃墟になる。彼は「亡国の徒」になりつつある。
ロシアのプーチンは以前から旧ソ連領のウクライナが譲れないラインであることを表明していたし、広範なロシア国民はNATOのこれ以上の拡大は許さない、という点でプーチンを固く支持している。むしろ経済危機を背景にした世界的な独裁傾向の高まりが、クーデターで親米国化を図るアメリカの政治手法に世界の指導者が反発している中で、今やロシア側が経済制裁している形になりつつある。アメリカは覇権を失いたくないなら、やがて停戦を選択するほかないであろう。消耗戦は資源を握る独裁国家の方が有利なのである。
#ウクライナ消耗戦

NATO拡大が招く欧州戦争の火種拡大
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は28日、スウェーデンとフィンランドのNATOへの加盟が認められる見通しとなったと発表した。両国の加盟に難色を示していたトルコのエルドアン大統領が同日、スウェーデンのアンデション首相とフィンランドのニーニスト大統領とマドリードで会談。トルコの懸念に両国が対応することを記した覚書を交わしたことで、加盟を容認した。
同覚書には、トルコで分離独立を目指す非合法武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)と関連組織の活動阻止や、2016年のクーデター未遂事件でトルコが「黒幕」だと非難するイスラム教指導者ギュレン師の勢力を支援しないことなどが盛り込まれた。
北大西洋条約機構(NATO)が北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟で合意したことについて、ロシアのプーチン大統領は29日、「軍事施設を設けた場合、相応の対抗措置を取る必要がある」と牽制した。NATOについても、「(ウクライナの極右によるクーデター)2014年以降、我々に対し、何らかの行為をしようとしていた」と指摘。「アメリカは同盟国の結束のために外敵が必要だった」と話した。
アメリカは世界覇権を延命するために反ロシアで欧州の分断に成功したが、これは世界市場の分断を招き、結果アメリカが覇権を失い世界の多極化を促すことになる。アメリカは軍需産業の国であるので、欧州に戦争の火種が拡大することは戦略的利益になるのだが、しかし、それがアメリカの覇権喪失に繋がるのであるから皮肉というしかない。
バイデン政権のアジア重視は口先だけであり、実際にはアメリカが重視しているのは経済統合で独自の通貨ユーロを持つ欧州なのである。ユーロ経済圏の拡大は、アメリカのドル支配を弱めるので、ウクライナのクーデターとNATO加盟のロシアへの軍事挑発を通じて、アメリカはEUの東への拡大を阻止した。
今回のフィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、欧州における新たな戦争の布石としての意味を持つであろう。歴史が示しているのは欧州における2度の世界大戦がアメリカの覇権を固めることになった。アメリカは自国が戦場にならない形で兵器売却の巨大市場化に成功したといえる。しかし二度あることが三度目の利益になるかはわからない。
問題はアメリカのこの欧州戦略が、世界第2位の経済規模を持つに至った覇権主義の中国との争いに、どのような戦略的効果を持つのか?という点である。また世界の分割が欧米経済にどのような作用を与えるのか、EUとの関係を深めつつあったロシアを、中国の側に追いやったことで、戦略的に中国・ロシア連合の方が優位になった。なりよりも中東が非米路線を鮮明にし、原油の増産を拒否したことで、対ロシア経済制裁が資源価格の高騰を招き、欧米側の経済的打撃が大きいことが分かり、ロシアの原油輸出禁止を撤回し、価格の上限規制に切り替える動きは、欧米側の経済制裁の失敗を示している。
日本にとっての戦略的変化は、欧州におけるNATOの拡大強化は、アジアにおいては中国・ロシア・インド・インドネシア連合の方が戦略的優位を確立した。日本は核保有国の三正面に敵を持つに至ったことである。アメリカのNATO拡大は欧州に戦争の火種を作ることはできたが、戦略的には経済成長著しいアジアで、アメリカが戦略的遅れをとることになったことは、バイデン外交の失敗を示している。アメリカの野党共和党で、バイデンをチェンバレンのファシスト勢力への融和外交と同じだ、との批判が今後さらに高まるであろう。
#NATO拡大の戦略的意味
同覚書には、トルコで分離独立を目指す非合法武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)と関連組織の活動阻止や、2016年のクーデター未遂事件でトルコが「黒幕」だと非難するイスラム教指導者ギュレン師の勢力を支援しないことなどが盛り込まれた。
北大西洋条約機構(NATO)が北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟で合意したことについて、ロシアのプーチン大統領は29日、「軍事施設を設けた場合、相応の対抗措置を取る必要がある」と牽制した。NATOについても、「(ウクライナの極右によるクーデター)2014年以降、我々に対し、何らかの行為をしようとしていた」と指摘。「アメリカは同盟国の結束のために外敵が必要だった」と話した。
アメリカは世界覇権を延命するために反ロシアで欧州の分断に成功したが、これは世界市場の分断を招き、結果アメリカが覇権を失い世界の多極化を促すことになる。アメリカは軍需産業の国であるので、欧州に戦争の火種が拡大することは戦略的利益になるのだが、しかし、それがアメリカの覇権喪失に繋がるのであるから皮肉というしかない。
バイデン政権のアジア重視は口先だけであり、実際にはアメリカが重視しているのは経済統合で独自の通貨ユーロを持つ欧州なのである。ユーロ経済圏の拡大は、アメリカのドル支配を弱めるので、ウクライナのクーデターとNATO加盟のロシアへの軍事挑発を通じて、アメリカはEUの東への拡大を阻止した。
今回のフィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、欧州における新たな戦争の布石としての意味を持つであろう。歴史が示しているのは欧州における2度の世界大戦がアメリカの覇権を固めることになった。アメリカは自国が戦場にならない形で兵器売却の巨大市場化に成功したといえる。しかし二度あることが三度目の利益になるかはわからない。
問題はアメリカのこの欧州戦略が、世界第2位の経済規模を持つに至った覇権主義の中国との争いに、どのような戦略的効果を持つのか?という点である。また世界の分割が欧米経済にどのような作用を与えるのか、EUとの関係を深めつつあったロシアを、中国の側に追いやったことで、戦略的に中国・ロシア連合の方が優位になった。なりよりも中東が非米路線を鮮明にし、原油の増産を拒否したことで、対ロシア経済制裁が資源価格の高騰を招き、欧米側の経済的打撃が大きいことが分かり、ロシアの原油輸出禁止を撤回し、価格の上限規制に切り替える動きは、欧米側の経済制裁の失敗を示している。
日本にとっての戦略的変化は、欧州におけるNATOの拡大強化は、アジアにおいては中国・ロシア・インド・インドネシア連合の方が戦略的優位を確立した。日本は核保有国の三正面に敵を持つに至ったことである。アメリカのNATO拡大は欧州に戦争の火種を作ることはできたが、戦略的には経済成長著しいアジアで、アメリカが戦略的遅れをとることになったことは、バイデン外交の失敗を示している。アメリカの野党共和党で、バイデンをチェンバレンのファシスト勢力への融和外交と同じだ、との批判が今後さらに高まるであろう。
#NATO拡大の戦略的意味

米のインド太平洋戦略は再検討を迫られている
アメリカ政府は今年2月、バイデン政権で初めてとなるインド太平洋戦略を発表した。地域で影響力を増す中国に対抗するため、日本を含む同盟国などと連携して安全保障と経済の両面で関与を強める方針を明確にした。「台湾海峡を含むアメリカ、同盟国などへの軍事侵攻を抑止する」と記した。この戦略はインド太平洋地域でのアメリカの安全保障と経済の指針となるものである。
安全保障分野ではオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイの5カ国を挙げ、条約上の同盟関係を深めるとうたっている。同盟国などとの関係強化による「統合抑止力がアメリカの基礎になる」とも明示した。その特徴は、アメリカが軍事・経済で台頭する中国に単独では対峙できないため、日本など同盟国や有志国とともに「あらゆる領域の侵略を思いとどまらせるように抑止力を強化する」と訴えた。日本の自衛隊などと協力し、アメリカ軍との相互運用性を高めるとしているのが特徴である。アメリカ政府高官は対中政策について「競争が紛争に発展しないように責任を持って管理する」と指摘。新戦略にはアメリカが提唱してきた「インド太平洋経済枠組み」を2022年初めに立ち上げると明記している。
このアメリカのインド太平洋戦略も、ロシアのウクライナ侵攻で、アメリカの戦略的重点が欧州となり、しかもロシアと中国の戦略的軍事的関係が深まる中では、中国を「競争相手」と位置付ける、今年2月のこのインド太平洋戦略はもはや役立たずとなっている。
特に習近平ファシスト政権に対するバイデン政権の認識の甘さは、「経済上の競争相手」との位置づけそのものが間違いである。中国は南太平洋に海軍拠点を作りつつある。習近平ファシスト政権はロシア以上に拡張主義で、世界支配の野心があるという点で、またその大軍拡の勢いから、バイデン政権の戦略上の甘さは、かってのイギリスのチェンバレンとよく似ている。
習近平ファシスト政権なら、ウクライナ戦争におけるロシア側の敗北の教訓から学び、軍事技術的弱点を修正し、補い、台湾や日本侵攻への体制の再構築を数年で行うであろう。反ファシズム統一戦線を準備しなければならないときに、アメリカの中国の位置づけが「競争相手」との認識では、アメリカは頼りにならないと見た方がいい。このままでは日本はウクライナのように、中国を疲弊させる捨て駒にされる可能性がある。日本は単独かもしくは台湾と結び、中国軍の侵攻を洋上で撃破するだけの軍事的強化を図らねばならない。国際情勢の厳しさは、憲法9条を「日本の宝」とする、おめでたい野党を衰退に追い込むであろう。対米自立と防衛力強化が日本の喫緊の民族的課題となっている。
#米のインド太平洋戦略
安全保障分野ではオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイの5カ国を挙げ、条約上の同盟関係を深めるとうたっている。同盟国などとの関係強化による「統合抑止力がアメリカの基礎になる」とも明示した。その特徴は、アメリカが軍事・経済で台頭する中国に単独では対峙できないため、日本など同盟国や有志国とともに「あらゆる領域の侵略を思いとどまらせるように抑止力を強化する」と訴えた。日本の自衛隊などと協力し、アメリカ軍との相互運用性を高めるとしているのが特徴である。アメリカ政府高官は対中政策について「競争が紛争に発展しないように責任を持って管理する」と指摘。新戦略にはアメリカが提唱してきた「インド太平洋経済枠組み」を2022年初めに立ち上げると明記している。
このアメリカのインド太平洋戦略も、ロシアのウクライナ侵攻で、アメリカの戦略的重点が欧州となり、しかもロシアと中国の戦略的軍事的関係が深まる中では、中国を「競争相手」と位置付ける、今年2月のこのインド太平洋戦略はもはや役立たずとなっている。
特に習近平ファシスト政権に対するバイデン政権の認識の甘さは、「経済上の競争相手」との位置づけそのものが間違いである。中国は南太平洋に海軍拠点を作りつつある。習近平ファシスト政権はロシア以上に拡張主義で、世界支配の野心があるという点で、またその大軍拡の勢いから、バイデン政権の戦略上の甘さは、かってのイギリスのチェンバレンとよく似ている。
習近平ファシスト政権なら、ウクライナ戦争におけるロシア側の敗北の教訓から学び、軍事技術的弱点を修正し、補い、台湾や日本侵攻への体制の再構築を数年で行うであろう。反ファシズム統一戦線を準備しなければならないときに、アメリカの中国の位置づけが「競争相手」との認識では、アメリカは頼りにならないと見た方がいい。このままでは日本はウクライナのように、中国を疲弊させる捨て駒にされる可能性がある。日本は単独かもしくは台湾と結び、中国軍の侵攻を洋上で撃破するだけの軍事的強化を図らねばならない。国際情勢の厳しさは、憲法9条を「日本の宝」とする、おめでたい野党を衰退に追い込むであろう。対米自立と防衛力強化が日本の喫緊の民族的課題となっている。
#米のインド太平洋戦略

ロシアと中国が侵略国家となる経済的背景
習近平政権による不動産業界と、IT(情報技術) 業界への統制強化が象徴する経済政策の失敗は、生産手段が国有化されている社会では価値法則が貫徹されない社会であるところからきている。中国政府は内陸部に工業団地をいくつも作ったが、すべて廃墟となっている。資本の蓄積がないところに工業団地を造っても、それは一時的公共事業でしかなく「新鬼城」という名の廃墟を作るだけで、国有地払い下げの土地バブル経済でしかない。官僚独裁の国家は何もかも独裁に頼る。新型コロナウイルスを封じ込める厳格な「ゼロコロナ」政策も同様で、その結果、中国経済は大きな打撃を受けている。
ロシアも共産党は解体したが、国有企業が民営化されたとはいえ、実体は元官僚の専有(これが政治権力と結びついたオリガルヒ=大富豪)である。土地が国有であり、資本主義化を進めても価値法則が貫徹せず、当然にも権力的価値規定となる。つまり元官僚の独裁政権には変わりがないのである。したがってロシアや中国などの、元社会主義の国は変質して資本主義化政策を進めても、外国企業の輸出基地になりえても、国内の資本主義化は進まず、相変わらず国家による元国営企業重視の資源輸出の計画経済でしかない。
結果は、ロシアは資源輸出国にすぎず、中国は外国企業への場所と労働力貸し経済でしかない。ロシアや中国が人口減少の危機に直面しているのは権力的価値規定による労働者人民の貧困の結果に他ならない。人口減少社会では「強欲の資本主義」の政策をとる日本と共通しているが、違うのはロシアと中国が独裁政権であり、軍事大国であることだ。つまり国力衰退に悩む独裁的地域覇権国は、国内的困難の打開を図って、外に軍事侵攻する傾向がその特長なのである。
ロシアと中国の共通点は、遅れた社会制度から社会主義になったということだ。当然長い社会主義建設の過程で、官僚独裁となり、変質して資本主義の道を歩もうとする。しかし生産手段の全人民所有の国は真の社会主義を目指すほかないのであり、したがって官僚独裁である両国の資本主義的経済政策は当然にも失敗する。独裁者がその政治目標を達成できないとき、巨大な軍事力に頼るしかない。当然、欧米先進国と軍事衝突することになる。
つまり欧米の東欧へのNATO拡大外交が、旧ソ連圏に及んだとき軍事衝突することになる。ウクライナ戦争とはこの政治的構図で必然的に起きたのである。この戦争がどのような歴史打開力を発揮するのか、が今後の注目点である。
旧社会主義国ソ連が、官僚独裁となり、スターリンが人民内部の矛盾と敵対矛盾を区別できず、間違った粛清を繰り返したとき、毛沢東は中ソ論争を起こし、修正主義批判を行い「このままでは中国はファシスト政権になる。」と述べて、共産党の一党独裁の打倒の人民運動の予行演習(これが文化大革命であった)を起こしたのである。プーチンは大統領に就任した当初「文化大革命も研究するべきだ」と語ったことがあるが、彼にはそれを成し遂げる理論的基礎がなかったことは不幸なことであった。
今後の世界情勢は、ロシアを中国の側に追い詰めたことで、米中の覇権争いが激化していくことは避けられない。問題は中東・インド・東南アジアなどの非同盟諸国が経済的力を保持していることだ。世界は多極化の中で経済危機と戦争の時代を迎えたといえる。
#中ロの侵略的背景
ロシアも共産党は解体したが、国有企業が民営化されたとはいえ、実体は元官僚の専有(これが政治権力と結びついたオリガルヒ=大富豪)である。土地が国有であり、資本主義化を進めても価値法則が貫徹せず、当然にも権力的価値規定となる。つまり元官僚の独裁政権には変わりがないのである。したがってロシアや中国などの、元社会主義の国は変質して資本主義化政策を進めても、外国企業の輸出基地になりえても、国内の資本主義化は進まず、相変わらず国家による元国営企業重視の資源輸出の計画経済でしかない。
結果は、ロシアは資源輸出国にすぎず、中国は外国企業への場所と労働力貸し経済でしかない。ロシアや中国が人口減少の危機に直面しているのは権力的価値規定による労働者人民の貧困の結果に他ならない。人口減少社会では「強欲の資本主義」の政策をとる日本と共通しているが、違うのはロシアと中国が独裁政権であり、軍事大国であることだ。つまり国力衰退に悩む独裁的地域覇権国は、国内的困難の打開を図って、外に軍事侵攻する傾向がその特長なのである。
ロシアと中国の共通点は、遅れた社会制度から社会主義になったということだ。当然長い社会主義建設の過程で、官僚独裁となり、変質して資本主義の道を歩もうとする。しかし生産手段の全人民所有の国は真の社会主義を目指すほかないのであり、したがって官僚独裁である両国の資本主義的経済政策は当然にも失敗する。独裁者がその政治目標を達成できないとき、巨大な軍事力に頼るしかない。当然、欧米先進国と軍事衝突することになる。
つまり欧米の東欧へのNATO拡大外交が、旧ソ連圏に及んだとき軍事衝突することになる。ウクライナ戦争とはこの政治的構図で必然的に起きたのである。この戦争がどのような歴史打開力を発揮するのか、が今後の注目点である。
旧社会主義国ソ連が、官僚独裁となり、スターリンが人民内部の矛盾と敵対矛盾を区別できず、間違った粛清を繰り返したとき、毛沢東は中ソ論争を起こし、修正主義批判を行い「このままでは中国はファシスト政権になる。」と述べて、共産党の一党独裁の打倒の人民運動の予行演習(これが文化大革命であった)を起こしたのである。プーチンは大統領に就任した当初「文化大革命も研究するべきだ」と語ったことがあるが、彼にはそれを成し遂げる理論的基礎がなかったことは不幸なことであった。
今後の世界情勢は、ロシアを中国の側に追い詰めたことで、米中の覇権争いが激化していくことは避けられない。問題は中東・インド・東南アジアなどの非同盟諸国が経済的力を保持していることだ。世界は多極化の中で経済危機と戦争の時代を迎えたといえる。
#中ロの侵略的背景
